英国の市場調査会社Omdia(旧IHS Markit)は2020年4月、2019年の世界半導体企業売上高ランキングを発表した。メモリ不況の影響などによって市場全体がマイナス成長となった中で、多角化戦略を進めるIntelが順調に売り上げを伸ばし、トップに返り咲いた。
英国の市場調査会社Omdia(旧IHS Markit)は2020年4月、2019年の世界半導体企業売上高ランキングを発表した。メモリ不況の影響などによって市場全体がマイナス成長となった中で、多角化戦略を進めるIntelが順調に売り上げを伸ばし、トップに返り咲いた。
Omdiaによると、2019年の世界半導体売上高は前年比11.7%減の4285億米ドルとなり、同社がデータ収集を開始した2001年以来、過去最悪の減少率を記録したという。2019年は世界半導体売上高ランキング上位10社のサプライヤーのうち8社の売上高が減少した。また、全てのアプリケーション市場および地域においても売上高が減少した形になっている。
特にメモリ不況の影響が顕著で、2018年にはランキングトップだったSamsung Electronicsが前年比29.7%減となって2位に転落したほか、3位のSK Hynix、4位のMicron Technologyも順位の変動はなかったもののそれぞれ同36.9%減、32.8%減と大きく下げている。
一方で、こうした市場にありながらもIntelは前年比1.3%増のプラス成長を見せ、売上高トップに返り咲いている。Omdiaの半導体製造担当シニアアリスト、Ron Ellwanger氏は、「Intelは5年前から事業戦略をさまざまな重要製品や最終製品市場に再フォーカスしており、この戦略が2019年に実を結んだ。Intelは単一の製品やアプリケーション市場への依存を避けることで、2019年の大規模な市場低迷の影響を緩和できた」と説明している。2019年、Intelの主要ビジネスであるマイクロプロセッサ事業の成長率はゼロだった一方で、例えばロジックチップの売上高は前年比7.1%増の成長を見せているのだという。
Intelの事業は現在、データセンター、自動運転を含むIoT(モノのインターネット)、SSD向けの3D NANDフラッシュメモリ、プログラマブル半導体、PCの計5グループに分かれているが、2019年はこのうち4つのグループで成長を遂げて、売上高は過去最高を記録したという。
この収益拡大の原動力となったのが、データセンターグループ(DCG)とIoTグループ(IOTG)だ。同社の売上高全体の33%を占めるDCGは、2019年、前年比2.1%増の成長を見せた。2019年のデータセンター向けの世界半導体市場は16.2%減と大きく減少したことを考えると、「注目に値する成長だ」(Omdia)としている。そして同社の売上高全体の5%を占めるIOTGは、前年比10.6%増と大きく成長したという。
Ellwanger氏は、「かつてはPC中心のマイクロプロセッササプライヤーと見なされていたIntelは、現在ではロジックチップからソフトウェア、アナリティクスに至るまで、多様なソリューションを提供するベンダーとなった」と説明。さらに「Intelの多角化戦略は、良い時も悪い時も、引き続き同社に貢献すると信じている。メモリのようなコモディティ分野は、常に好不況のサイクルに影響されるだろうが、Intelは魅力的な半導体市場セグメントと、持続的な成長を実現できる付加価値製品で基盤を築いている」と述べている。
Omdiaはまた、「2019年の傑出したパフォーマー」として、ソニーを挙げている。ソニーは2019年、CMOSイメージセンサーの好調によって前年比30.9%増と大きな成長を見せ、前年から4つ順位を上げて13位にランクインした。
Omdiaによると、2019年第4四半期、トリプルカメラ搭載デバイスがスマートフォン出荷台数全体の31%を占め、初めてデュアルカメラ搭載デバイス数を上回った。これにより2019年の世界のCMOSセンサー市場は22.9%増となったという。Ellwanger氏は、「スマートフォンがマルチカメラ構成をますます採用していくにつれ、ソニーの消費者向けセンサーに対する需要も増加する」と話している。
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