筑波大学数理物質系の辻本学助教らは、超伝導体テラヘルツ光源の同期現象を観測することに成功した。テラヘルツ波を用いた量子通信デバイスの開発などにつながるとみられている。
筑波大学数理物質系の辻本学助教らによる研究グループは2020年5月、京都大学大学院工学研究科の掛谷一弘准教授やパリ高等師範学校のDhillon博士らによる研究グループと共同で、超伝導体テラヘルツ光源の同期現象を観測することに成功したと発表した。
超伝導体テラヘルツ光源は、筑波大学と米国アルゴンヌ国立研究所の共同研究によって発明された。近年、化学分析や医学・薬学、環境計測など幅広い用途でテラヘルツ波の応用が注目されている。実用化に向けてテラヘルツ波の高出力化が必須となるが、高強度で位相のそろったフォトン(光子)が放射される仕組みについては、これまで解明されていなかったという。
そこで辻本氏らは今回、放射されたフォトンの偏波状態を観察することにした。アクロマート波長板と呼ばれる偏波装置を用いて、精密な測定を行った。その結果、巨視的なスケールで位相同期が生じる際は、偏波状態に特徴的な変化が表れることを発見した。これは、超伝導体プラズマ波とフォトンが結合すれば、高強度で位相がそろったフォトンが放出されることを示すものだという。
さらに、超伝導体中に存在する超伝導プラズマ波を介して、結合するフォトンの状態を量子力学的な手法で解析した。これにより、量子暗号通信の基盤要素となる量子もつれ状態を実現する可能性があることも分かったという。
今回の研究成果は、超伝導体中の特殊なプラズマ波を精密制御する技術に応用できる他、次世代のテラヘルツ無線通信や分光技術に有用な量子通信デバイスの開発につながるとみられている。
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