大阪大学の研究グループとロームは、共鳴トンネルダイオード(RTD)のテラヘルツ波検出感度を、従来の1万倍に高める方法を共同で開発した。この技術を用い、毎秒30Gビットの高速無線通信実験に成功した。
大阪大学大学院基礎工学研究科の冨士田誠之准教授らの研究グループとロームは2019年12月、共鳴トンネルダイオード(RTD)のテラヘルツ波検出感度を、従来の1万倍に高める方法を共同で開発したと発表した。この技術を用い、毎秒30Gビットの高速無線通信実験に成功した。
大阪大学とロームの研究グループは2011年、RTDを用いたテラヘルツ無線通信に、初めて成功した。RTDは基本波でテラヘルツ発振が可能なため、トランジスタに比べて回路構成が簡単で、小さい電力消費で動作できるなどの特長がある。ただこれまでは、送信器からのテラヘルツ波出力が十分ではなく、通信速度は毎秒9Gビットにとどまっていたという。
研究グループは今回、RTDを検出器として活用することにした。RTDは通常、動作電圧を負性抵抗領域に設定すると発振するが、検出器としての動作は不安定になるという。ところが、検出したテラヘルツ波とRTDの発振周波数が一致した場合、注入同期現象によって発振出力が検出動作に寄与し、検波出力が増大することが分かった。
開発した同期検波方式と従来の直接検波方式を比べると、テラヘルツ波の検出感度は1万倍も向上したという。
研究グループは、350GHz動作のRTD送信器から出力されたテラヘルツ波を、オンオフ変調方式で無線伝送し、開発した同期検波方式によるRTD受信器を用いて復調した。この結果、高い信号強度が得られ、毎秒30Gビットの通信に成功した。この通信速度は、電子デバイス送受信器を用いた誤り訂正なしのエラーフリー無線通信としては最高値となり、非圧縮スーパーハイビジョン映像(8K Dual Green方式)の伝送も可能な値だという。
研究グループによれば、将来は毎秒100Gビットを超える高速通信も可能とみている。動作周波数を2THzまで高めると、分光分析や非破壊検査、分解能が高いレーダーへの応用など、高速通信以外の用途にも適用できるという。
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