TSMCは、7nmから孔系にEUVを量産適用し始めた。今年2020年には、配線にもEUVを使って5nmを量産している。もはや、最先端の微細加工には、EUVは無くてはならない露光装置となった。
EUVを製造できる装置メーカーはオランダのASML1社しかないが、その出荷状況を図15に示す。2019年Q1に、積算で31台出荷されたEUVスキャナー「NXE:3400シリーズ」は、2020年Q4に53台になった。そして、2020年第Q1に4台追加されたと書かれていることから合計57台となり、この1年間で26台出荷されたことが分かる。
ASMLのEUV製造キャパシテイが年間26台と聞いていたので、ASMLはフル稼働でEUVをつくり続けていることになる。そして、1年間に26台出荷されたが、そのうち20台はTSMCに導入されたとみている。TSMCは、今後も1年に20台以上のペースでEUVを導入していくとみられる。
TSMCに追い付くことを宣言しているSamsungも、これと同等のペースでEUVを導入しようとする動きがある。開発開始から約20年の歳月を経て、まさにEUVの時代がやってきたと言えよう。
TSMCに量産適用されることにより、EUVの性能も向上してきている。図16は、「NXE:3400B」の稼働率を示している。2019年Q1の平均稼働率は約70%だったが、2020年Q1には10%向上して約85%に改善されている。
この稼働率の改善に伴って、スループットも上昇している(図17)。2019年後半以降、1台1日当り、約1500枚の処理が可能になっている。1時間当たりのスループットは、約62枚になる。また、2020年Q1に最高値として1台1日当り、2700枚以上の処理が実現した。1時間当たりのスループットは、112枚になる。
ASMLによれば、EUVを使う工程は、7nmで5〜6レイヤー、5nmで10レイヤー以上、3nmで20レイヤー以上であるという(図18)。現在、TSMCでは、孔にEUVを使う7nmの月産ウエハー枚数が170K(K=千枚)、配線にもEUVを使う5nmが130Kであり、ほぼフル稼働状態であると聞いている。
TSMCが20台のEUVを使っていると仮定して、1台当たりのスループットを計算してみよう。
図16で示したASMLの最大のスループットが、1日当り2700枚、1時間当たり112枚だった。TSMCで20台のEUVが稼働率85%で動いているとすると、1時間当たりのスループットが127枚となり、ほぼ同じ値になった。TSMCでのEUVの稼働状況が、感覚的につかめたのではないだろうか。
露光装置における解像度は、次のレイリーの式で表される。
R=K1/λ・NA
λは光の波長で、NAはレンズの開口数である。現在稼働しているEUVは、λ=13.5nmで、NA=0.33である。次世代のEUV露光装置では、λは13.5nmのままだが、レンズの開口数がNA=0.55と大きくなる。その結果、解像度Rが向上する。
NA=0.55のEUV露光装置は、図19のように巨大化する。しかし、NAを大きくすることによって、より微細なパタンが形成できる。図20は、バークレーにあるThe Center for X-ray Optics(CXRO)のNA=0.5のEUV露光装置で、米Inpriaの無機レジストをパターニングした結果である。Line & Spaceでは、ハーフピッチ(hp)で8nmが(かろうじてだが)解像できている。他にも、微細なピラーやティップパタンが形成できている。高NA化したEUV露光装置を使えば、より微細なパタンが形成できる期待が持てる。NA=0.55のEUV露光装置のリリースは、2021年以降になる見込みである。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.