感染が疑われつつも、「PCRを受けたくない」従業員と、陽性が判明すると企業活動が停止するから「PCRを受けさせたくない」と考えている雇用主 ―― どちらも普通にいると思います。
実は、医療系サイトで掲載されたアンケート結果によれば、医師も、頭では「風邪症状があれば即座に仕事を休むべき」「その上で、症状によってはPCR検査も受けるべき」と理解していても、心情としては「休めない」「休みたくない」「PCR検査が陽性だと病院、医院が閉鎖してしまう」等と考えていることが分かります。
多くの医師は、個人事業主のような意識を持っています。
「自分が休んでは、外来がストップしてしまう……」「手術が……」「研究が……」「病院が……」「診療所が……」と思わず考えてしまうわけです。
さすがに今のご時世では実際に症状があったら休むハズですが、「休めない」という圧力は割とあります。大昔ですがインフルエンザを解熱剤でごまかして外来していた同僚がいたのを思い出します。
え? 私が熱を出したとき、きちんと休んでいたかですって? ……昔のことは忘れました。昔の定義については黙秘します。
医師だけでは無いと思います。やっと緊急事態宣言が解除されて必死に働く同僚に対して、「風邪気味だから休みます」「検査してPCR陽性だったら、皆さん一緒に自宅待機してください」「店を休業してもらうかも知れません」と言う勇気 ―― 皆さん、持てますか?
私は……正直……申し訳ありませんが、「朝起きて熱が37.1℃、咳なし、のどの違和感だけごくわずかにあり、鼻水無し、鼻づまり有るかも? 食欲も割と普通、他に異常なし」だった場合に、出勤しない自信がありません。
咳でもあれば37.1℃でも「休もう」と決断できるかもしれませんが……。COVID-19に無症状、軽症症例が多いことは、本当に大問題です*)(もちろん重症化率が高いよりは低い方が良いに決まっているのですが)。一般企業、自営業者の方々は、この程度の症状だった場合にきっともっと休みづらいはずです。
*)江端ツッコミ:「COVID-19の無自覚感染」には、心底腹を立てています。学生たちが、集って大声でしゃべっているのを見ると、殴り倒したくなる衝動を抑えるのが大変です。彼らのほとんどは、無自覚のまま感染を広げるだけ広げ、無自覚のまま治癒してしまい、その上、抗体まで獲得します。一方、私のようなシニアは、その被害を一方的に受けて、最悪、死に至ります。なんとも業腹です。
カギは、きっと「経営者」と「行政」が握っています。
経営者はどうか社員に「風邪症状があるなら休め」と「命令」していただけないでしょうか?
そして、国は、積極的に疾病休暇を取らせる企業を支援していただけないでしょうか?
中学校の内申点に出席率を記載することを禁じませんか?
素人が思い付く支援としては、例えば社員1人当たり年に28日間以上の疾病休暇を命じた場合に税を優遇する、などはいかがでしょう?
まじめな人、集団の中で仕事をしている人ほど、休みにくいと思われます。迷惑を周りにかけることを避ける日本人の集団の利益を尊ぶ風潮そのものを変えていかないと、長期的にみてRt<1の状況を達成することは、ほぼ不可能です。
2020年7月に入り、残念ながらRt>1の状況が続いています。個人的には全国民が「風邪をひいたらどんなに軽症でも休むべき」を常識として受け止めるような世の中になる必要があると思っています。
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