COCOAは、前述のように利用者の名前や電話番号、位置情報などのデータは一切取得しないシステムとなっており、世界各国で導入されている同様の接触確認アプリと比較してもかなりプライバシーへの配慮を重視したものになっている。また、ダウンロード数拡大に向けてはその「義務化」を求める声もあるが、平氏は、アプリをインストールすること、陽性者が処理番号を登録することいずれも個人に任せるという「2つのオプトイン」の重視から、その可能性を否定した。
平氏はこうした仕組みを採用した理由について、「われわれは、新型コロナにあっても、どうやって自由主義、民主主義、プライバシーの配慮を維持するのか、という大きな命題を背負いながらこのアプリ開発を選択した。私は今、政府の一員だが、コロナがあったからといって中国のような社会になるのは、国民の一人としてもまっぴら御免なので、この仕組みで頑張っていきたい」と語っていた。
現在、陽性者の場合でも陽性と発覚時に保健所から連絡する際、処理番号の通知とともにCOCOAのダウンロードや番号登録を依頼するのみで、強制力はない。陽性登録数は8月3日午後5時現在で「107件」と伸び悩むが、平氏は、「陽性患者の登録が一番『目詰まり』しやすい構造になっていることは政府としても把握している。しかし、だからといって一足飛びに、義務で強制的に、とすることはない。ダウンロードしてもらい後から強制にするのは、信義則に反する。そうではないやり方でこの部分をどう解消していくか、関係省庁横断で議論して取り組んでいきたい」と説明。そのうえで、「陽性になった方は、入れていただくことが社会や同僚、家族を守ることになるので是非登録してほしい」と訴えた。
なお、「COCOAをインストールして陽性者と接触したことが分かってもPCR検査が受けられなければ意味がない」といった意見もあるが、これについて平氏は、「現在の制度ではPCR検査を受けるかどうかは保健所、医師が判断する。厚労省から医師会などを通じてCOCOAに関して説明しており最近ようやく事例が出てきたが、熱がある際、アプリもいれていて『濃厚接触者』の通知が来たと医師に伝えれば、結果としてPCR検査が受けやすくなるという制度設計は最初からしている」と説明。そのうえで、「ただ、検査体制には限界があるため、症状が出てもすぐに検査を受けられるかは感染者数にもよる。西村大臣も加藤大臣も『通知が来たらやはり不安になるので、できるだけPCR検査を受けられるような仕組みは作りたい』という意欲は持っている。将来的にはそうしたメッセージを出せるよう体制を整備していきたい」と語っていた。
平氏は、広報活動について、「本格的広報はこれからだ」と説明。今後COCOAのダウンロード数拡大に向けた取り組みとして下図の内容を紹介した。既にタレントの中井美穂氏を起用したテレビCM第一弾の放映やWEB広告、携帯事業者からユーザーへのSNSによる周知などは実施しているが、今後はCM第2弾や交通公共機関での広告、分かりやすいアプリの解説動画などを準備調整中だという。また、飲食店などでの感染拡大が懸念されることから、飲食業界や大学、その他関係団体への周知徹底も行っている。
インストール促進については『インセンティブ提供』も1つの手として考えられるが、政府としては、「今の時点では考えていない」としている。一方で、平氏は、「間接的な効果として期待できるのは、『経済活動とコロナ封じ込めをどう両立していくか』という点だ。各業界がガイドラインを作成していると思うが、COCOAや各自治体が提供する『来店者登録アプリ』を併用しながら、どうやって感染拡大を封じ込めていくかということは民間の方も真剣に取り組んでいくだろう」と各業界の対応について期待を示していた。
平氏は、「例えばCOCOAを入れている方は宿泊料をディスカウントするというホテルの報道もあった。店舗に入店の際にCOCOAインストールを求めるということも後業界で出てくると思う。また、キャッシュレスとCOCOAのインストールを連携させるというような話も聞いており、そうしたサービスが実現すればポイント還元などのやり方もできるだろう。結果としてみんなが入れると安心が広がり、業界もリスクコントロールができる。その相乗効果の生態系が回っていけばダウンロード数も増えるのではと期待している」と言及。また、「企業が会社全体でCOCOAを入れれば、運営のリスク管理に極めて有効だ。それぞれの活動が広がっていけば、ダウンロード数も大幅に増えていくのではないかと思う」と述べていた。
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