東北大学は、周囲の温度変化を利用して発電する「常温発電デバイス」を開発した。IoT(モノのインターネット)センサーと組み合わせることにより、暗所でもバッテリーレスで情報収集が可能となる。
東北大学マイクロシステム融合研究開発センターおよび大学院工学研究科機械機能創成専攻の小野崇人教授らによる研究グループは2020年8月、周囲の温度変化を利用して発電する「常温発電デバイス」を開発したと発表した。IoT(モノのインターネット)センサーと組み合わせることにより、暗所でもバッテリーレスで情報収集が可能となる。
開発した常温発電デバイスは、「熱電発電素子」と「蓄熱部」「放熱部」などで構成されている。熱電発電素子は、Bi2Te3とSb2Te3の、複数の対からなる熱電素子をめっき技術で作製し、シリコン基板で挟み込んだ構造である。
熱電発電素子は片面が蓄熱部に、もう一方の面が放熱部にそれぞれ接触している。この素子に温度差を与えるか、周囲の温度環境が変化すると、熱が蓄熱部に吸収されたり、蓄熱部から放熱されたりする。この時、熱電発電素子の両側に温度差が生じて発電する仕組み。
実験に用いた常温発電ユニットのプロトタイプには、蓄電のためのキャパシターや温度センサー、マイコン、無線ユニットなどが組み込まれている。研究グループはこの常温発電ユニットを建物内部に設置し、半日の環境温度変化に対する発電量などについて原理検証を行った。
実験結果から、1日のうちで温度が大きく変化する朝や夕方に、発電量も大きくなることが分かった。発電したエネルギーを蓄電し、センサーやマイコン、通信ユニットに給電する。これにより、温度センサーで取得したデータを、バッテリーなしでも必要に応じて無線通信することが可能となった。
研究グループは、性能をさらに向上させるため、熱電素子に不純物を添加し発電量を増やす技術なども開発しているという。
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