九州大学は、電気光学ポリマーを用いた超高速光変調器の開発に成功した。1チップで最大毎秒200Gビットの信号を発生、高い熱安定性を有することも確認している。
九州大学先導物質化学研究所の横山士吉教授と呂國偉博士らによる研究グループは2020年8月、電気光学ポリマーを用いた超高速光変調器の開発に成功したと発表した。1チップで最大毎秒200Gビットの信号を発生、高い熱安定性を有することも確認している。
ポリマーを用いた光変調器は、従来の無機半導体系(ニオブ酸リチウムやシリコン、インジウムリンなど)光変調器と比べ、伝送速度や消費電力などに優れている。研究グループもこれまで、光信号伝送のデータレートが毎秒100Gビットという光変調器の研究を行ってきた。今回の成果は、開発目標としてきた値の2倍となる高速伝送を達成した。日産化学と共同で、実用化に向けた電気光学ポリマーの開発も行い、110℃の高温環境下で安定に動作することを確認した。
電気光学ポリマーは、理論的に100GHz以上の応答特性を持つと予測されている。今回行った光データ伝送実験では、最高で毎秒200Gビット PAM-4の光信号を発生させることに成功した。ビットエラー解析を行い、信号エラーが発生していないことも分かった。しかも、デバイスの動作電圧は1.3Vと低く、消費電力は極めて小さい。1ビット当たりに換算すると42フェムトジュールの消費電力特性である。
現行の光データ伝送技術は、100Gビットを超える光信号を発生させる場合に、25Gビット×4個など、複数の光変調チップを並列で用いるのが一般的だ。今回の成果により、1チップで200Gビットの信号を発生させることが可能となった。これを並列化すれば、リンク速度を800Gビットや1.6Tビットに拡張することができるという。
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