東京工業大学らの研究グループは、膜厚が10nm以下の窒化アルミニウムスカンジウム薄膜を作製。これまでより高い強誘電性を有することが確認された。
東京工業大学物質理工学院材料系の舟窪浩教授と安岡慎之介大学院生らによる研究グループは2020年9月、膜厚が10nm以下の窒化アルミニウムスカンジウム薄膜を作製し、これまでより高い強誘電性を有することが確認できたと発表した。
窒化アルミニウムスカンジウム「(Al、Sc)N」は、強誘電体の中で最も高い強誘電性を持ち、スマートフォンの高周波フィルターなどに用いられている。この強誘電体を不揮発性メモリへ応用するには、膜厚をさらに薄くしていく必要がある。ところが、強誘電体を薄膜にすると、物質によっては「サイズ効果」により強誘電性が失われることもあり、実用化に向けてはさまざまな検証が必要であった。
研究グループは今回、気相にしたスカンジウム(Sc)とアルミニウム(Al)の金属を窒素ガスと反応させ、ScとAlの比率[Sc/(Sc+Al)比]を変えた数種類の(Al、Sc)Nを作製した。これらの試料を用いて、電源を切ったときに残る1cm2当たりの静電容量(残留分極値)と膜中のSc/(Sc+Al)比を調べた。
実験により(Al、Sc)Nは、Sc/(Sc+Al)比が小さいほど、ある分極状態から別の分極状態に変える(反転させる)ために必要な1cm当たりの電圧(抗電界:Ec)と、印加できる1cm当たりの電圧(最大電界:Emax)の差は、拡大することが分かった。
つまり、Sc/(Sc+Al)比を小さく(スカンジウムの濃度を低く)すれば、分極状態を繰り返し反転させても、2つの状態の間で安定した行き来ができることが明らかになった。

左は電源を切ったときに残る1cm2当たりの静電容量(残留分極値)と膜中のSc/(Sc+Al)比の関係、右は反転させるために必要な1cm当たりの電圧(抗電界、Ec)(中塗り点)と印加できる1cm当たりの電圧(最大電界、Emax)(中抜き点)および、膜中のSc/(Sc+Al)比の関係 出典:東京工業大学強誘電体のサイズ効果についても確認した。この結果、膜厚を従来の約3分の1となる48nmまで薄くしても、高い強誘電特性を維持できることが分かった。さらに、非線形誘電率顕微鏡法を用いて確認したところ、膜厚9nmでも強誘電性を発現することが明らかとなった。
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