東京工業大学とNTTの研究グループは、34Gビット/秒の高速無線通信をわずか410mWの電力消費で実現する「300GHz帯無線トランシーバー」を開発したと発表した。シリコンCMOSプロセスで製造できるため、無線機のコスト削減も可能となる。
東京工業大学工学院電気電子系の岡田健一教授らとNTTの研究グループは2020年8月、34Gビット/秒の高速無線通信をわずか410mWの電力消費で実現する「300GHz帯無線トランシーバー」を開発したと発表した。シリコンCMOSプロセスで製造できるため、無線機のコスト削減も可能となる。
シリコンCMOSプロセスを用いた300GHz帯無線機は、これまでも発表されているが、消費電力や回路面積の削減は極めて難しかったという。研究グループは今回、利得が高いミキサー回路を新たに考案。送信機と受信機に新開発のミキサー回路を採用することで、従来の課題を解決したという。
新たに開発したミキサー回路は、中間周波数帯の変調信号と周波数変換に用いるローカル信号を、異なる端子から入力する構成とした。変調信号とローカル信号を同じ端子から入力していた従来方式に比べ、ミキサー回路の利得を約2倍も向上させることに成功した。また、中間周波数は100GHz以下に設定でき、消費電力も大幅に削減することが可能だという。
研究グループは、65nmのCMOSプロセスを用いて、開発した300GHz帯無線トランシーバーを試作し、300GHz帯における無線通信特性について評価を行った。この結果、無線規格「IEEE802.15.3d」で規定されるスペクトルマスクを、278GHzから304GHzの周波数で満たしており、QPSKから16QAMの変調方式に対応可能であることを確認した。
通信速度は最大34Gビット/秒で、この時の送信機と受信機の消費電力は合計で410mWとなった。従来に比べて消費電力は4分の1以下である。また、チップ面積もトランシーバー全体で3.8mm2に抑えた。
今回の研究成果によって、300GHz帯無線トランシーバーの消費電力と実装面積を大幅に削減することができ、スマートフォンなどモバイル機器への搭載を可能にした。
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