非平衡量子統計力学理論、条件を外れても成立:量子アニーリング装置で検証
東京工業大学らによる共同研究グループは、D-Wave Systems製の量子アニーリング装置を用いて量子シミュレーションを実行し、磁性体の非平衡量子統計力学理論が、その成立条件を外れても成立していることを発見した。
東京工業大学の西森秀稔特任教授らによる共同研究グループは2020年9月、D-Wave Systems製の量子アニーリング装置を用いて量子シミュレーションを実行し、磁性体の非平衡量子統計力学理論が、その成立条件を外れても成立していることを発見した。
研究グループは今回、量子アニーリング装置「D-Wave 2000Q」上に、1次元横磁場イジング模型と呼ばれる磁性体を模擬的に実装した。その上で、この中に生じる欠陥の数に関する理論(キブル・ズーレック機構)を検証した。
原子スケールの微小磁石(青や黄色)の向きが変わる部分(赤の矢印)が欠陥 出典:東京工業大学
実験では、欠陥数の時間的変化を数百時間にわたって詳細に検証した。この結果、量子ビットが理想的な状況とは異なる動作をしていると仮定しなければ説明できないデータが得られたという。
さらに、欠陥数の統計分布も詳細に解析した。これにより、理想的な動作をする量子ビットを前提とした非平衡量子統計力学理論の予測が、実際は理想的な状況とは異なる動作を行う量子ビットでも成立することが分かった。これは、理想的な条件で導き出された理論が、その適用限界を超えた場合も成立することを、量子コンピュータを用いて示した初めての事例だという。
欠陥数の統計量に関する理論値が実験データと整合 出典:東京工業大学
- 新手法の酸化膜形成でSiC-MOSFETの性能が10倍に
SiCパワー半導体で30年来の課題となっていた欠陥の低減が、大きく前進しようとしている。京都大学と東京工業大学(東工大)は2020年8月20日、SiCパワー半導体における欠陥を従来よりも1桁低減し、約10倍の高性能化に成功したと発表した。
- 小型で省電力の300GHz帯無線トランシーバー開発
東京工業大学とNTTの研究グループは、34Gビット/秒の高速無線通信をわずか410mWの電力消費で実現する「300GHz帯無線トランシーバー」を開発したと発表した。シリコンCMOSプロセスで製造できるため、無線機のコスト削減も可能となる。
- 東京工大ら、Ka帯衛星通信向け無線ICを開発
東京工業大学とソシオネクストは、標準シリコンCMOSプロセスを用い、Ka帯衛星通信向け無線ICを開発した。従来は6〜9個のICを用いていた通信機能を1チップで実現している。
- 東工大ら、「p型透明超伝導体」を初めて実現
東京工業大学と東北大学は共同で、低温では超伝導体となる「層状ニオブ酸リチウム(LiNbO2)」が、常温で「p型透明導電体」になることを発見した。
- 有機トランジスタ用結晶膜成膜の高速化に成功
東京工業大学は、有機トランジスタ用半導体の超高速塗布成膜に成功した。ディップコート法と液晶性有機半導体を活用することで、従来の溶液プロセスに比べ成膜速度は2000倍以上も速い。
- 東京工大、極薄ウエハーのレーザー加工技術を開発
東京工業大学は、極薄ウエハーにダメージを与えずに、ダイシングストリート幅を従来の4分の1に縮小できるレーザーダイシング加工技術を開発した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.