それでは、実際どのような用途での利用が期待されているのか、分野別にそのアプリケーション例を聞いた。
まず、車載用途では車内のセンシング用途での検討が活発だという。具体的には高分解能を生かしたジェスチャーによるHMI(ヒューマンマシンインタフェース)の操作や、乗員がどこに座っているかまで正確に検出する乗員検知および「大人か、子供か」といった識別、そして心拍、呼吸などの微細な動きを検知する生体情報検知が挙げられる。
60GHzレーダーは前述の通り車内が暗かったり高温だったりしても関係なく、また例えば乗員が毛布をかぶり眠っていても検知可能だ。この特性によって、欧州で実施されている自動車の安全性テスト「新車アセスメントプログラム(Euro NCAP:European New Car Assessment Program)」で2022年から試験項目に追加されるなど、各国で整備が進む「幼児置き去り検知」機能に対応できるようになるという。
次にスマートフォンやスマートウォッチなどのモバイルデバイスでは、まず、ジェスチャーによるさまざまな制御が期待される。場合によっては、画面をタッチしたりデバイスを持ち上げたりしなくて済むようになるだろう。また、人の接近を検知して、デバイスをレディー状態にすることで初期応答速度を高めたり、検知した生体情報を検知し健康管理系のアプリと連携したりといったケースも期待できるという。既にGoogleが販売している「Pixel 4」に60GHzレーダーが搭載されており、手かざし操作機能「Motion Sense」を実現している。
スマートホームおよび家電でも、車載の乗員検知と同様に、高齢者や子供の見守り機能での活用が期待されるほか、室内で人を検知することで省電力化に配慮した最適な照明制御や、人がいる場所に合わせたエアコンの風向などの自動制御、さらに水栓にレーダーを搭載することで洗い物をする際などの水量、水温などのジェスチャーによる制御も実現できるという。
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