ルネサスの車載戦略の詳細について、まず同社のオートモーティブソリューション事業本部副事業本部長、片岡健氏がデジタル領域を中心に説明した。
片岡氏は、COVID-19のパンデミックによって、CASEのうちのS(シェアリング&サービス)の勢いが失速していると指摘。「そもそも公共機関にシェアした形で使うということが敬遠される傾向になり、むしろパーソナルなモビリティサービスの需要が拡大している」と語った。CASEのSに代わり、「Personal Mobility Service」のPを加えた「PACE」へとトレンドが変化しており、このPersonal Mobility Serviceの実現の前提条件として、コネクテッドに加え、電動化、自動化の技術進化が必要になるとしている。
さらに、もう1つの市場トレンドの変化として、近年、ソフトウェア重視の開発プロセスが加速していることも挙げた。これは、ソフトの開発工数が増大していることから、ソフトウェアをOEMやティア1が継続的に開発するにあたりソフトウェアのプラットフォーム化が求められていること。さらに、従来のハードウェアとしてのクルマの価値に加え、ソフトウェアを定期的にアップグレードすることで継続的に車の商品価値を向上させることが重視されてきたことが理由に挙げられるという。
こうした市場の変化に対して同社は、ソフトウェアの再利用性という「スケーラビリティ」、ソフトウェア開発工期の短縮などの「Time to market」、そしてヘテロアーキテクチャによる単位電力当たりの高パフォーマンスを図る「Power Efficiency」という3つの価値提供を行っていくとしている。
特にスケーラビリティにおいては、同社はADASやインフォメーション、ゲートウェイ&DCU、車載制御という幅広い車載アプリケーションに対して、ローエンドからハイエンドまでマイコン、SoCを展開し、同一世代内の同一アプリケーションだけでなく、同一世代の異なるアプリケーション、さらに異なる世代間でもソフトウェアの再利用性を持たせているという特長がある。同社は、「車載コントローラー市場における強力なRH850ソフトウェア資産を持つMCUおよびSoCの幅広いオートモーティブポートフォリオにより、ゲートウェイおよびDCUにおける当社ポジションを強化する」としている。
また、ADASの中でも完全自動運転からサラウンドビュー、フロントカメラ、リアカメラ、運転者監視システムなど複数のアプリケーションがあるが、「われわれは、基本のBUSシステムやセーフティ、セキュリティといったアーキテクチャを統一したうえで各種コミュニケーションのIPのチャンネルを変える、またはCPUのコア数を変えることでスケーラビリティを担保する」としている。
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