IEEE 802標準化委員会は、無線LANの次の段階に向けた規格の最終調整に入るなど、順調な進捗を遂げている。ワーキンググループは最近、「IEEE 802.11be(以下、802.11be)」と呼ばれる技術基準について詳細を発表したところだが、これが予定通り2024年後半に実用化されることになれば、「Wi-Fi 7」に指定される見込みだ。
欧州の規制当局は、Wi-Fiおよび次世代「Wi-Fi 6E」(6GHz帯に対応するWi-Fi)向けに必要とされている6GHz帯を、欧州で利用できるようにするための取り組みが遅々として進まないことに対し、ますます圧力を受けているようだ。
一方でIEEE 802標準化委員会は、無線LANの次世代規格の最終調整に入るなど、順調な進捗を遂げている。ワーキンググループは最近、「IEEE 802.11be(以下、802.11be)」と呼ばれる技術基準について詳細を発表したところだが、これが予定通り2024年後半に実用化されることになれば、「Wi-Fi 7」に指定される見込みだ。
まずは、良い点に注目してみよう。802.11be(EHT:Extreme High Throughput)規格の策定に取り組んでいる科学技術者たちや標準化委員会は、非常に野心的な目標を掲げており、増加の一途をたどるコネクティビティ需要への対応や、帯域利用のさらなる効率化などを実現していく考えだという。
規格を策定するに当たり、データ伝送速度の高速化や、低レイテンシ、電力/コスト効率の向上、干渉軽減、容量密度の向上などを目指していくが、これら全てを段階的に実現していくことは、非常に難しいとみられる。委員会は、2024年半ばには802.11beの修正案を発表できるとしていることから、同年末までには、Wi-Fi Allianceのサポートを受けながら認証および相互運用性試験を開始できる見込みだ。
もちろん、旧バージョンの無線LANと同様に、事前に認証されたエンドユーザー機器が、2024年後半よりも前に登場することになるだろう。こうした状況は、現在Wi-Fi 6でも同じように生じていて、次世代のWi-Fi 6Eもその後に続くとみられる。
次世代へのスムーズな移行を実現するためには、旧世代Wi-Fiとの後方互換性を確保する必要がある。
802.11be(Wi-Fi 7)向け標準規格は、やはりOFDMA(直交周波数分割多重方式)を採用するとみられるが、重要技術の進展によって、4096QAM(直交振幅変調)方式を採用するという選択肢も提供される見込みだ。
指定されている改良版のMU-MIMO(マルチユーザーMIMO:これまでは“協調型の”CMU-MIMOと呼ばれていた)は、Wi-Fi 6では8個とされる空間ストリームを、16個に倍増できるという。これにより、スループットを20%高められる見込みだが、前述のようにオプションとして提供されるため、低い変調方式も引き続きサポートされる予定だ。
一方で標準化委員会は、「Wi-Fi 7では、こうした取り組みを実現することが、最大の設計課題になるのではないか」とも指摘している。
隣接しない帯域を束ねるリンクアグリゲーションやマルチリンクなど、Wi-Fi 7で導入必須となるであろう技術によって、Wi-Fi 7の理論上の最大スループットは46Gビット/秒(bps)ともいわれている。標準化委員会が提示する、より現実的な最大スループット(実環境での実装を考慮した場合)は30Gbpsだ。
もちろん、Wi-Fi 6EやWi-Fi 7などが全て実用化されるころには、6GHz帯は既に他の無線サービス(少なくとも5Gセルラーを除く)に広く活用されているだろう。現在開発が進んでいるAFC(Automated Frequency Co-ordinator)は、効率的なスペクトラム共有を可能にするとみられている。
ネットワーキングコンサルタント会社であるSenza Filiの創設者Monica Paolini氏が最近発表した技術概要では、「Wi-Fi 7は企業に柔軟性と機能をもたらし、無線LANの利用範囲を拡大する」と指摘する。
Paolini氏は、Wi-Fi 7は、遅延、信頼性、QoS(Quality of Service)の向上を必要とするアプリケーションをサポートする上でも大きな役割を果たすだろうと述べる。
企業にとっても、産業オートメーション、監視、遠隔制御、VR(仮想現実)/AR(拡張現実)、その他のビデオアプリケーションなどにおいて、さらに大きな機会を提供するはずだ。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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