Nokia(ノキア)は2020年10月15日、同社の製品や取り組みを説明するイベント「Connected Future 2020」(同年10月14〜16日)について、報道機関向けに説明会を開催した。【訂正あり】
Nokia(ノキア)は2020年10月15日、同社の製品や取り組みを説明するイベント「Connected Future 2020」(同年10月14〜16日)について、報道機関向けに説明会を開催した。
冒頭ではノキアの社長であるPekka Lundmark(ペッカ・ルンドマルク)氏がホログラムで登場し、「日本のパートナーとして、日本の5G(第5世代移動通信)市場を支えたい」と述べた。続いて、2020年10月1日にノキアの日本法人ノキアソリューションズ&ネットワークスの社長に就任したばかりのJohn Lancaster-Lennox(ジョン・ランカスターレノックス)氏が登壇(こちらはホログラムではない)し、「5Gは無線ネットワークという枠組みを超えた存在。日本では、『Society 5.0』の実現に向け、企業向けソリューションを拡大していく」と語った。
ノキアソリューションズ&ネットワークスのCTO(最高技術責任者)を務める柳橋達也氏は、5Gの現状とミリ波帯の活用について、セッションを行った。同氏によれば、現在、世界で92の通信事業者が商用5Gを発表しているという。開始したサービスの大部分は、北米、欧州、アジア太平洋地域(APAC)に集中しているのが特徴で、2025年までにこの3つの地域だけで、5Gモバイル接続の88%を反映すると予想されている。
5Gのスループット(ピーク値)については、現時点では北米が突き抜けているが、これは「特に米国が積極的にミリ波を使用しているからだとみている。米国ではサービス開始初日からミリ波を利用していた」(柳橋氏)とする。「一方で平均のスループットや、LTEとの比較値(スループットの差)については、米国のスコアは低い。これは、現在の5Gをけん引しているミッドバンド(サブ6GHz帯)が米国では整備されていないことに起因すると見ている」(同氏)
さらに柳橋氏によれば、最近の5Gでは、スループットにおける理論値と、フィールドでの実測値の差が少なくなってきたという。つまり「スループットについて、これ以上の技術的な改善が難しいという状態になりつつある」(同氏)ということだ。これまでの5Gは、いかにスループットを向上するかが重要だったが、これからはどう活用するのかに、よりフォーカスしていく必要があると柳橋氏は説明する。
そこでポイントになるのがミリ波だ。柳橋氏は、「スタジアムや固定無線ネットワークでミリ波帯を利用するというのは分かりやすい例だが、われわれとしては、特に企業向けサービスでミリ波を使う際に、もう少し違うユースケースはないかと考えている」と語り、その一例として高精度な位置情報推定を挙げた。
サブキャリア間隔が120kHzと、LTE(15kHz)に比べて広いミリ波では、端末から基地局に情報を送信する時の間隔をより短くできる。「LTEと比較すると、ミリ波での送信間隔は約8分の1にまで短縮できる」(柳橋氏)。このため、データを送信する際のタイムスタンプの精度が、より高くなる。これは、端末の移動にかかった時間をより正確に計測できる、つまり、より高精度に距離を推定できることを意味する。「端末の位置推定を、1m以下のセンチメートル級まで高めることを、標準化団体で議論している」(同氏)
【訂正:2020年10月22日19時10分 当初、「搬送波が120kHz」としておりましたが「サブキャリア間隔が120kHz」の誤りです。お詫びして訂正致します。】
柳橋氏は、「5Gミリ波による位置情報推定のユースケースは、スマートファクトリーで幾つか考えられる。例えば、AGV(無人搬送車)の位置をより正確に把握できるようになる、デジタルツインにおいてより正確に物理空間を仮想化空間で再現できるようになる、といったことが考えられる」と続ける。
同氏は「これまで企業向けの5Gサービスは、低遅延という特性にフォーカスされがちだったが、今後はもう一つ、高精度な位置情報推定というメリットが加わるのではないか。ノキアとしては、位置情報推定を、高速/大容量、低遅延、多接続に続く5Gの“第4の軸”として考え、企業向けのユースケースやソリューションを作っていく」と締めくくった。
会場では、ローカル5G向けの製品や小型な5Gシステム、水冷方式の基地局の試作品など、5G向け製品群も展示していた。
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