STマイクロエレクトロニクスは、ハーフブリッジゲートドライバと2つのGaN-HEMT(窒化ガリウムを用いた高電子移動度トランジスタ)を集積したSiP(System in Package)製品プラットフォーム「MasterGaN」を開発した。
STマイクロエレクトロニクスは、ハーフブリッジゲートドライバと2つのGaN-HEMT(窒化ガリウムを用いた高電子移動度トランジスタ)を集積したSiP(System in Package)製品プラットフォーム「MasterGaN」を開発した。従来のシリコンベースのソリューションと比較して充電器およびACアダプターで3倍の充電速度、80%の小型化、70%の軽量化を実現するという。今回この製品の詳細について、同社担当者から話を聞いた。
テクノロジーの発展に伴って世界的にエネルギー消費量が増加するなか、省エネ化/低炭素社会のキーデバイスとなるパワー半導体に注目が集まっている。特に、従来のシリコンより高電力変換効率といった特性をもつSiC(炭化ケイ素)やGaNなどの材料を用いた次世代パワー半導体への期待は高く、その製品開発が活発化している。STマイクロは今回、GaNを用いた同社初の製品プラットフォームとしてMasterGaNを発表した。
同プラットフォームで最初の製品として提供を開始したのは最大出力500W対応の「MasterGaN1」で、具体的な用途としてはスマートフォンやPCなどの充電器/ACアダプターなどを想定している。今後45W、65W、150W、300W対応の製品も順次リリースしていく予定だ。
MasterGaNの最も大きな特長は、600Vのハーフブリッジゲートドライバと2つのGaN-HEMTをワンパッケージに集積した点だ。この特長によってより小型かつ高い堅牢性、そして設計の容易さといったメリットをもたらすとしている。同社担当者は、「GaNとゲートドライバを内蔵したものは既に市場にもあるが、2つのGaNトランジスタを統合するハーフブリッジ製品は世界初だ」と説明している。
そのメリットについて、具体的には、一般的なシリコンベースのデバイスを用いた充電器やACアダプター比べ、MasterGaNを用いたものは3倍の充電速度、80%の小型化、70%の軽量化が実現可能だという。
また、ディスクリートのゲートドライバとGaNトランジスタをそれぞれプリント配線板上に実装する場合、それらを接続するパターン配線の寄生インダクタンスにより、ノイズが大きくなるなどしてしまい、その特性を十分に引き出す設計には専門的な知識が必要となっていた。MasterGaNでは、ゲートドライバとGaN-HEMTをワンパッケージに集積していることから寄生インダクタンスを大幅に削減、GaN-HEMTの高速スイッチング特性を引きだすことに成功しているという。
同社の説明担当者は、「GaNトランジスタを駆動するため最適なドライバを新たに開発し、これまで培ってきた設計ノウハウを100%活用した。顧客にとって大きな課題となっていたノイズ対策設計部分を簡略化したことが最大のメリットだ」と強調していた。
堅牢性については、ローサイドおよびハイサイドそれぞれに低電圧誤動作防止機能(UVLO)を搭載しているほか、インターロック機能や専用シャットダウン端子、過熱保護などの保護機能も内蔵している。
搭載のGaN-HEMTは耐圧600Vで、オン抵抗は150mΩ、最大電流定格は10A。ロジック入力は3.3〜15Vの信号と互換性がある。また、パッケージも厚さわずか1mmのGQFNパッケージ(9×9mm)と小型かつ前述した今後展開予定の製品もピンコンパチとなるといい、「ユーザーの電力要求に合わせて簡単に取り換えることができる」としている。
MasterGaN1は量産中で1000個購入時の参考単価は7米ドル。また、評価ボードについても提供中だ。
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