Micron Technology(以下、Micron)は2020年11月18日、日本のメディア向けに、同年11月9日(米国時間)に発表した176層の3D NAND型フラッシュメモリ(以下、176層3D NAND)の説明会を行った。
Micron Technology(以下、Micron)は2020年11月18日、日本のメディア向けに、同年11月9日(米国時間)に発表した176層の3D NAND型フラッシュメモリ(以下、176層3D NAND)の説明会を行った。
新製品では、既報の通り、同社の「第5世代3D NAND技術」を採用。前世代の3D NANDフラッシュと比較して、読み書きのレイテンシが35%以上改善され、最高クラスの競合品と比較してダイサイズは30%小型化されている。データ転送速度は33%以上改善し、ONFI(Open NAND Flash Interface)バス上で1600Mトランスファー/秒(MT/s)を実現する。
MicronのStorage Business UnitでDirector of Strategic Partnershipを務めるLarry Hart氏は、「現在、市場では64層か96層の3D NANDが最も使用されている中、われわれは、その約2倍に当たる176層を実現した」と強調する。
同氏は、176層3D NANDは、Micronの3つの技術で実現したと語る。
1つ目は、メモリセルアレイを3次元積層する多層化技術だ。Micronの3D NANDは32層の積層から始まって(第1世代はIntelとの共同開発)、64層(32+32層)、96層(48+48層)、128層(64+64層)と多層化を進め、今回の176層(88+88層)は第5世代に当たる。
2つ目は、シリコン層の代わりに伝導性の高い金属ワード線を用いるリプレースメントゲートアーキテクチャだ。Hart氏は「同技術によって、ダイを接続するピラーを微細化できるので、今後も長期にわたり微細化を進めるための重要な技術だ」と説明する。3つ目は、CMOSロジック層の上にメモリセルアレイを積層していく「CMOSアンダーアレイ(CuA)」だ。まずCMOSロジック層を作り込み、その上にメモリセルアレイを積層する。「ビルの真下に地下駐車場を作るようなもの」(Hart氏)で、従来のようにメモリセルアレイの周囲にロジック層を作るよりも省スペースとなる。
さらにMicronは、次世代3D NANDに向けて微細化および性能改善を続けるために、今回から、従来のフローティングゲート方式に代わりチャージトラップ方式を採用している。
これらの技術を組み合わせることで、176層3D NANDのダイサイズを大幅に縮小し、高密度化を実現した。
176層3D NANDのダイは、厚さわずか75μmまで薄型化されている。これは、紙1枚の約5分の1相当の厚さだ。これにより、176層3D NANDの厚さは、Micronの64層3D NANDと同等レベルになっている。176層3D NANDのダイサイズは小指の爪ほどで、そこに20〜30時間分のHDビデオのデータを格納できるとする。
既に量産出荷している176層3D NANDはTLC(Triple Level Cell)で、容量は512Gビット。なお、2021年半ばにはQLC(Quad Level Cell)品も出荷する予定だ。
176層3D NANDはMicronのシンガポール工場で製造している。「176層3D NANDの量産には3〜4カ月かかると想定されるが、どのようにサイクルタイムを上げていくのか」という質問について、Micronは「詳しいサイクルタイムは明かせないが、できる限り短縮するために日々エンジニアたちが努力している」とだけ述べるにとどめた。
Gartnerの予測によると、NANDフラッシュの需要は2023年には1兆Gバイトに上るとされている。Hart氏は「NANDフラッシュには、小型化、高速化、低消費電力化、信頼性の向上という4つの大きな需要がある。5G(第5世代移動通信)が普及すれば、ストレージにも大きなプレッシャーがかかることになるだろう。データが爆発的に増える中、われわれは3D NANDによってそれらの需要に応えていく必要がある」と語った。
2004年にNANDフラッシュ市場に参入したMicronは現在、年間500億Gバイト以上のNANDフラッシュを製造している。設備投資にも積極的で、2019年8月にはシンガポールのNANDフラッシュ工場の拡張を完了した。2020年9月29日に発表した、2020年度(2020年9月3日を末日とする)の売上高は214億3500万米ドルで、2019年度に比べて8%減少した。売上高のうちNANDフラッシュが占める割合は29%。NANDフラッシュの売上高は前年比で14%増加している。
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