前回に続き、光トランシーバーをMulti-Chip Module(MCM)上に実装し、新しい光トランシーバーの市場を開こうとしているCo-Packaged Optics(CPO)実現に向けた課題などを述べる。
前回に続き、光トランシーバーをMulti-Chip Module(MCM)上に実装し、新しい光トランシーバーの市場を開こうとしているCo-Packaged Optics(CPO)実現に向けた課題などを述べる。
前回、CPOの規格化の課題として、
について解説した。
そのCPOについて考察を続けたい。
(6)CPOの考察
CPOは、増大する入出力データ量に対応するためにSFP、QSFPやQSFP-DDといったFront Panel(FP) Pluggableを置き換える新しい光モジュールとして、ハイパースケールデータセンター応用を中心に活発に議論されている。ハイパースケールデータセンターは、1カ所で100万個近い光トランシーバーを使用し、光モジュール市場をけん引してきた。CPOという全く新しい技術/Form Factorの導入は新しいECO System(Supply Chain)へ移行すると期待され、ビジネスチャンスを狙って開発競争が起こっている。
データセンターとは要求事項が異なるため固有のForm Factorが使用されてきたHigh Performance Computer(HPC)、スーパーコンピュータやAI(人工知能)クラスタなどへのCPO導入が魅力的である。この分野は距離が短く、ナノ秒オーダーのレイテンシが求められるので、光インタフェースなども異なっていくと考えられる。しかし、小型、高集積、低消費電力という要求があるので、CPO向けに開発されたデバイス、部品や実装技術が適用できると考えられている。市場規模としては比較的小さいが、HPCへのCPO搭載がデータセンターより早いかもしれない。
さらに、ICの入出力の限界を超える技術としても関心が高い。飽和傾向のムーアのスケール則(「ムーアの法則」)に対し、システムの高性能化を実装(Packaging)で解決しようという技術動向がある。その中で光伝送デバイスはMCM(Multi-chip Module)あるいはSiP(System in Package)の入出力デバイスとして期待されている。
また、1チップに多くの機能を集積化するのではなく、個別機能を多数集積化したチップを高速/低レイテンシの配線で接続するDisaggregation Systemなどに適用する光配線としても期待されている。このようなムーアのスケール則に関係する革新技術は加速度的に研究開発が進む可能性があり、注目していく必要がある。
現在のCPOの議論を見ていると、筆者が直接開発に関わった1990年代に世界中で巻き起こった光インターコネクトの激しい競争時代を思い起こす。
きっかけはコンピュータと通信の配線ボトルネックであった。メインフレームコンピュータの並列化、仮想化が進みプロセッサ間や記憶装置との接続がボトルネックとなった。大型化するATM交換機での配線も障壁だった。ベル研究所(現Nokia Bell Labs)やIBMが先頭を走り、世界中で開発が進められた。1992年からはベル研究所やIBMが中心となったOptoelectronic Technology Consortium(OETC)という米国ARPA(当時)プロジェクトが推進された。IEEEのECTCという実装関係の学会に光インターコネクトのセッションを設立したのもこのころである。
筆者たちの12芯シングルモードファイバー並列伝送モジュールは幸い市場に受け入れられ、量産された。これは、12ch低閾値電流(Ith=1mA程度)レーザーアレイの製造チームと12chのシングルモード光結合を可能にした部品メーカーと生産技術チームの努力のたまものであった。
さまざまなアプリケーションから引き合いがあり、PCB実装、ファイバー引き回しや光コネクターの小型化などユーザー要求を勉強した。試作システムで1年間ビットエラーが出なかった時にシステムアーキテクチャを大幅に変更すると言われ、新しいシステム構築に寄与した喜びがあった。
当時よりデバイス技術や実装技術が格段に進化しているが、現在議論されている内容の根本にあるものは同じではないかと考えている。また、先人達の1980年代の日本における大型国家プロジェクトで開発されたOpto-Electric Integrated Circuit(OEIC)も参考になると思う。
本稿では具体的な活動が見られるFP Pluggableの将来Form FactorであるCPOに関する課題を述べるが、同時にICの隣に光伝送デバイスを置くための課題をも示すことができればと考えている。CPOの技術課題は挑戦的な内容が多いが、ベンチマークとして先に述べたFacebookとMicrosoftがけん引するCPO Collaborationを引用しながら技術課題を紹介する。
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