今回から、2020年11月にバーチャルで開催された「フラッシュメモリサミット(FMS:Flash Memory Summit)」の講演を紹介する。まずは、半導体メモリのアナリストJim Handy氏による講演「Annual Flash Update - The Pandemic's Impact(フラッシュメモリの年次アップデート-パンデミックの影響)」の要旨を報告したい。
フラッシュメモリとその応用に関する世界最大のイベント「フラッシュメモリサミット(FMS:Flash Memory Summit)」が2020年11月10日〜12日に開催された。FMSは2019年まで、毎年8月上旬あるいは8月中旬に米国カリフォルニア州サンタクララで実施されてきた。COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の世界的な大流行(パンデミック)による影響で、2020年のFMS(FMS 2020)は開催時期が3カ月ほど延期されるとともに、バーチャルイベントとして開催された。
FMSは数多くの講演と、展示会で構成される。その中で、フラッシュメモリを含めた不揮発性メモリとストレージの動向に関するセッション「C-9: Flash Technology Advances Lead to New Storage Capabilities」が興味深かった。このセッションは4件の講演があり、その中でアナリストによる3件の講演が特に参考になったので、講演の概要をご紹介する。
なお講演の内容だけでは説明が不十分なところがあるので、本シリーズでは読者の理解を助けるために、講演の内容を適宜、補足している。あらかじめご了承されたい。
最初は半導体メモリのアナリスト、Jim Handy氏による「Annual Flash Update - The Pandemic's Impact(フラッシュメモリの年次アップデート-パンデミックの影響)」と題する講演の要旨を報告しよう。Handy氏は米国の半導体メモリ業界では良く知られたアナリストで、FMSではアドバイザーやセッションチェアなどを務めている。
Handy氏は始めに、COVID-19のパンデミックが半導体メモリ市場に与えた影響を説明した。結論から言ってしまうと、講演当時からみて直近に相当する2020年10月時点までの影響は軽微だった。半導体メモリ市場の大半を占めるDRAMとNANDフラッシュメモリの価格(記憶容量当たり)は安定に推移している。長期的には、いずれのメモリも記憶容量当たりの製造コストは低下する傾向にある。価格が一定を維持している状態がむしろ異常だとも言える。
なぜならば、過去には価格が一定を維持した後は、価格崩壊と呼べる急速な値下がりが発生してきたからだ。DRAMは2018年秋から2019年前半にかけて値下がりを経験し、NANDフラッシュメモリは2018年春から秋にかけて価格崩壊を経験した。
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