図3にはMate 40 Proのコンピュータ基板のプロセッサチップとメモリチップを示した。左は256Gバイトの容量のNAND型フラッシュメモリ。通常、NANDフラッシュは韓国のSamsungか、SK hynixあるいは米Micron Technology、日本のキオクシア(旧東芝メモリ)のロゴが載っているが、本チップにはHiSiliconのロゴがパッケージに刻まれている。内部の詳細はテカナリエレポートで報告している。HiSiliconが大きく寄与した構成のメモリで、中身が手の込んだものとなっている。
右下がプロセッサと密接に関係するDRAMである。SamsungのLPDDR5 SDRAMが採用され、POP(Package On Package)の構造でプロセッサの真上に置かれている。図3の中央はDRAMの直下にあるプロセッサパッケージである。ここに、Huawei/HiSiliconが開発し、TSMCが5nmで製造したプロセッサ「Kirin 9000」が埋め込まれているわけだ。ちなみに、Kirin 9000はあくまでもブランド名でチップネームは「Hi36A0」である。
図4は、Mate 40 Proに搭載されている機能チップの国籍やHiSilicon製のデバイス分布である。
米中問題が顕著化しているので、米国製半導体の比率は下がっており、23%程度となっている。主に通信用のパワーアンプ系が米国製だ(詳細はテカナリエレポート)。多くは中国製や台湾製にも置き換えが可能と思われる。Huawei/HiSilicon 製が全体のおおむね半分を構成していることが分かる。これは極めて高い占有率だ。チップはセット化されていて、高度なシステム力も読み取ることができる。その他はセンサーなどで日本製、欧州製となっている。図4の右にはHiSiliconのデバイス分布をクローズアップしたグラフを示す。
チップセットの全体の82%ほどがアナログやアナログとデジタルを混載したミックスドシグナルである。今、チップセットを構築できる半導体メーカーは、デジタルは1チップに集約し、トランシーバーや電源系、通信系などアナログを多数用意できることがキーとなっている。オーディオなども含まれる。図4内の(1)はデジタル、(2)はメモリ、(3)はパワー系である。HiSiliconはセンサー以外の全分野を手掛けているわけだ。
図5は、Kirin 9000のパッケージを分離し、さらに内部のチップを取り出した様子である。(1)はPOPの上のメモリパッケージの端子面、(2)薬品を使ってモールドを取り除いたもの、(3)メモリチップを分離したもの、(4)POP下のプロセッサパッケージ:メモリとの接続面、(5)薬品を使ってモールドを取り除いたもの、(6)プロセッサシリコン(配線層あり)、(7)(6)の配線層を取り除き内部の回路や機能を可視化したものとなっている。
弊社では入手したほぼ全プロセッサを図5のような過程で取り出し、シリコンを解析して優勝劣敗や未来の進化ポイントなどを明らかにしている。配線層を取り除くことで内部のロジック領域、メモリ領域が明らかになるので、演算器や端子の回路などはほぼ100%判断することができるわけだ(ちなみに筆者は前職で半導体プロセッサの設計を100製品ほどこなしてきた。さらにCPUの開発部署や海外でライセンス会社に10年以上勤めていたので半導体を読むのは得意中の得意である)。
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