図6は2020年10月に5nm製造プロセスを用いて発売されたApple A14 BIONICとHuawei/HiSiliconのKirin 9000のチップを比較したものだ。チップサイズなどの詳細は割愛させていただく(詳細はテカナリエレポート)。
両チップとも搭載している総トランジスタ数が公表されているが、それによるとA14 BIONICは118億個で、Kirin 9000は153億個である。回路規模はKirin 9000が30%ほど大きい。この数字は、まさに5Gのベースバンド(モデム)の差であると思われる(根拠数字はあるが省略)。モデムを除いた回路規模はほぼ同等だ。そのため、A14 BIONICとKirin 9000のアプリケーションプロセッサは、回路規模では、現時点では双璧を成していると判断してよいだろう。
総トランジスタ数をチップ面積で割ったものが、単位面積(例えば1mm2)当たりの集積密度だ。同じ5nmを使う2つのプロセッサであるが、2社の集積密度には8%もの差がある。A14 BIONICに比べ、Kirin 9000の方が集積密度が高い。インプリメント力の差はメーカー間で大きいが、5nmでも大きな差が存在していることも明確になった。
表1(一部省略あり)は、Huawei/HiSiliconのプロセッサKirinを、チップ開封情報も踏まえてまとめたものである。弊社は全てのKirinチップを開封し、解析した情報を所有している。
2009年にデビューしたKirinはその後、ほぼ毎年進化を続けてきた。米中問題によって、今後しばらくの間、Kirinの進化を見られなくなってしまうとしたら、単純に技術者として寂しい。HuaweiやHiSiliconは技術面で常にトップであり、驚きを見せてくれてきたからだ。Huawei/HiSiliconには、これからも輝きのある技術を見せ続けてもらいたい。
なお、Mate 40 Proには「謎チップは一つも存在しなかった」ことを付け加えておく。
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