さて、技術的な話(?)はここまでとして、ブロックチェーンのアプリケーションの話をしましょう。どんな技術であれ、その技術がアプリケーションで使われてこそ、意味があるからです。
ブロックチェーンを使う可能性のあるアプリケーションを、下記のように分類してみました。
台帳を使う業務/サービス/アプリであれば、何だってブロックチェーンを使えます。しかし上記#0の仮想通貨(ビットコイン)と、それ以外の他のアプリケーションは、コンセンサス(同意)アルゴリズムの内容が決定的に異なります。
ビットコインでは、台帳ページを追加する権利が、ビットコインの発掘屋(マイナー)たちの壮絶なバトルで発生する、という話は、「ビットコインの正体 〜電力と計算資源を消費するだけの“旗取りゲーム”」でしました。
ところが、ビットコイン以外のブロックチェーンでは、こういう野蛮なコンセンサスアルゴリズムは採用しません(というか、アプリケーションの性質上、採用できません)。
ビットコインは、取引のラウンドが発生する度に、電力とコンピュータリソースを使った「数当てゲーム」行い、たった1人の勝者の勝利宣言と、敗者の敗北宣言で、1ラウンドが終了し、勝者が賞金(6.25BTC, 現時点のレートで2200万円相当)を総取りする「バトルモード」です。
しかも、ビットコインの取引を行う人間と、けんかしている人間が、全く別々に無関係に存在している(完全に赤の他人)という、奇妙な構成となっています(参照)。
例えば、前回の例では、私がBitFlyer社からビットコイン5000円分の購入を申し入れた直後にから10分間、中国奥地に設置された数千台のビットコイン専用マイコンが、膨大な電力を消費しながら数当てゲームを行い、その勝者に2200万円(分のビットコイン)が付与されます ―― この強烈な非日常感に眩暈(めかい)がしそうです。
しかし、普通に考えれば、そんなプロトコルの方が変なのです。
本来、ブロック(台帳のページ)の生成に関わる人物は、アプリケーションのユーザーであり、そして、台帳のページ(例えば契約書)を作るためには、ユーザー全員で知恵を出しあう「協力モード」であるべきです。
この「協力モード」のブロックチェーンを調べてみると、大きく2つのパターンがあるようです。
この2つのパターンを、発明の登録のプロセスと、特許を受ける権利の発生から特許出願までのプロセスを例として説明します(ちなみに、特許庁の審査官とのバトルは、私の業務の一つです)。
まずは、一つのブロックに全ての処理を記載してしまう方法です(左図)。ここでは、新しいアイデアを思い付いた人が、特許庁に特許出願するのではなく、その発明について記載したメモ(発明者と発明の内容の両方が記載されている)を、ブロックとしてまとめて、チェーンにつなげる方法です。
もう一つは、処理の流れ(ワークフロー)そのものを、ブロックチェーンとしてしまう方式です(右図)。特許手続(特許を受ける権利の発生)→会社への譲渡→会社による特許出願の、それぞれをバラバラにブロックにするという方法です。
ちなみに、ブロックチェーンにも国際標準化活動があるようです。標準化ができれば、異なる組織同士でブロックをつなぐことができて便利かもしれませんが、インターネットの通信プロトコルなどとは違い、「何がなんでも、標準化が必要」という空気は(私には)感じられませんでした。
通信の場合、両方のプロトコルが一致していないと、1ビットも情報の伝送ができませんが、ブロックチェーンは、ブロックをつなげるだけですので、不細工で取り扱いが面倒くさくなったとしても、なんとかなりそうに(私には)思えるのです。
まあ、今後、ビットコインが他の通貨とマージして使えるようにする、というような話が出てれくれば、一気に標準化の流れが進む可能性もあると思います。
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