自動車業界は10年前まで、半導体の供給不足によって自動車製造が混乱状態に陥るという事態を、予測することができなかった。自動車メーカーは今から10年後、電気自動車(EV)向け電池やさまざまな重要部品に必要とされる材料が不足するという問題に直面することになるだろう。
自動車業界は10年前まで、半導体の供給不足によって自動車製造が混乱状態に陥るという事態を、予測することができなかった。自動車メーカーは今から10年後、電気自動車(EV)向け電池やさまざまな重要部品に必要とされる材料が不足するという問題に直面することになるだろう。またこうした材料不足は、予想より早く発生する可能性もある。
自動車に搭載されるエレクトロニクス部品が増加するに伴い、自動車メーカーと半導体業界との結び付きは強くなった。半導体メーカーは2020年に、第4四半期の季節的要因による軟調を見越して生産量を増加させなかったため、自動車の需要が突如として急増した際、迅速に対応できなかった。
サプライチェーンの問題はさておき、半導体の製造には18週間を要する。自動車メーカーは現在、限られた供給量の半導体をめぐり、大規模な半導体調達企業(民生機器メーカーなど)との間で競争を繰り広げている。
純粋な需要と供給の観点から見ると、どの材料も似通った状況にある。ZEV(Zero Emission Vehicle)への移行が進むに伴い、自動車メーカーは今や、グラファイトやコバルト、ニッケル、マンガンなどの材料に照準を定めるようになった。IHS Markitの予測によると、電気自動車の需要は、2020年に約250万台に達し、2021年には約70%増加する見込みだという。EV向け電池に使われる材料を入手するのは、簡単なことではない。リチウムイオン電池の正極(アノード)材に使われるグラファイトは、早ければ2022年にも不足する可能性がある。
米国の市場調査会社Verified Market Researchの予測によると、世界EV向け電池市場は、2019年に351億米ドル規模に達し、2027年には1334億米ドル規模に増大する見込みだという。英国ロンドンに拠点を置くIOSCO規制の価格報告機関Benchmark Mineral Intelligence(以下、Benchmark)のレポートによれば、電池市場ではグラファイトの需要が毎年30%増加し、2022年には不足状態に陥るとみられている。
世界的な原料開発メーカーAlmontyのCEO(最高経営責任)を務めるLewis Black氏は、「グラファイトやレアアース材料は、埋蔵場所を見つけることはそれほど難しくないが、その抽出が非常に難しい。鉱山の開発には、半導体工場の建設と同様に、数十億米ドル規模の投資が必要な上、長期間を要する」と述べる。
「レアアースはどこにでも存在するのに、なぜ環境に配慮した管轄区域で採掘が行われていないのかというと、その抽出に必要なリーチング(浸出)が環境汚染を招くレベルにあるからだ。自分たちの本拠地で採掘したいとは誰も思わない。このため採鉱拠点が置かれるのは、米国や欧州よりも生活環境水準による影響が小さく、コストも低い管轄区域となる」(同氏)
さらに同氏は、「17種類のレアアースは、ほぼ全てが中国で採掘され、輸出されている。中国が引き続き、独自のハイテクエコシステムを構築していくとなれば、『レアアースの輸出は、自国にとって得策ではない』との判断に至る可能性がある」と説明する。
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