STMicroelectronics(日本法人:STマイクロエレクトロニクス/以下、ST)は2021年3月、Armコアを搭載する32ビット汎用マイコン「STM32ファミリ」の低消費電力シリーズとして、新たに40nmプロセスを採用した「STM32U5シリーズ」を発表した。
STMicroelectronics(日本法人:STマイクロエレクトロニクス/以下、ST)は2021年3月、Armコアを搭載する32ビット汎用マイコン「STM32ファミリ」の低消費電力シリーズとして、新たに40nmプロセスを採用した「STM32U5シリーズ」を発表した。製造プロセスの微細化に加え、新たな機能を多数盛り込み、従来の低消費電力シリーズ製品に比べて大幅に消費電力を低減しつつ、性能を高めた他、物理的なハッキング攻撃に強いセキュリティ機能を搭載した。既に2Mバイト容量のフラッシュメモリを搭載した製品などのサンプル提供を開始し、2021年9月から量産を開始する予定。参考サンプル価格は3.6米ドル。
STでは、汎用マイコンであるSTM32ファミリの低消費電力製品シリーズとして、Arm Cortex-M4を搭載したSTM32L4+シリーズやArm CortexーM33を搭載したSTM32L5シリーズを展開してきた。今回、サンプル提供を開始したSTM32U5シリーズは、同L4+や同L5シリーズの後継に相当する新世代の低消費電力製品シリーズとして位置付ける。CPUコアにはSTM32L5シリーズと同様Arm CortexーM33を採用している。
最大の特長は、低消費電力シリーズとして初めての40nm製造プロセスを採用し、90nmプロセスを採用してきた従来品から大幅に消費電力を抑えつつ、性能/機能アップを図った点にある。動作周波数は最大160MHzで、160MHz動作時の1MHz当たり消費電流は19μA。786KバイトのSRAM全領域を保持した低消費電力モードでの消費電流は6.6μAで、スタンバイモードの消費電流に至っては300nAまで抑えている。これら微細プロセス採用による消費電流の抑制に加え、電力消費の大きいCPUコアの動作機会を減らすことのできる「LPBAM」(ローパワーバックグラウンド自律動作モード)と呼ぶ機能を新たに搭載して、低消費電力動作を可能にした。
LPBAMは、ペリフェラルからDMA(ダイレクトメモリアクセス)経由のデータ転送をCPUコアを停止したまま実行できるもの。「これまでDMAのシリアル、レジスタ設定が変わる度に、CPUコアが起動、動作する必要があったが、LPBAMを使えば、CPUの起動回数を10分の1程度に減らすことが可能。その結果、一連の消費電力を最大で90%削減できる」(STマイクロエレクトロニクス)とする。LPBAMに対応するペリフェラルは、I2C、SPI/UART、A-Dコンバーター、D-Aコンバーター、音声検出、ローパワータイマー(LPTIM)、GPIOになっている。
性能面でも、動作周波数の引き上げに加え、モーター制御などの用途で使用機会の多い数値演算用アクセラレーター(FMAC、Cordic)やグラフィックスアクセラレーターを搭載。「CPUへの負荷を軽減できるため、消費電力を抑えられる他、負荷が軽くなったCPUで通信制御など他の処理が行いやすくなった」(STマイクロエレクトロニクス)
セキュリティ機能の強化を図った点もSTM32U5シリーズの特長。「産業機器市場からの要望が多かった」という物理的な攻撃に対するセキュリティを強化。暗号化エンジンとして、新たに電源電圧の変化などを物理的手段で観察し暗号解読しようとするサイドアタック攻撃耐性を高めた「サイドチャンネルAES/PKA」を搭載。これまでは検知することが難しかった部分的な破壊による物理攻撃も検知できる耐タンパ機能や、外付けメモリも内蔵メモリ同様オンザフライで暗号/復号できるメモリ保護機能なども搭載。JTAGへのアクセスをパスワードロックできる機能なども搭載して、あらゆる面で物理攻撃への耐性を強化。PSA CertifiedやSESIPといったセキュリティ認証でLevel 3認定を申請する予定で「認定されれば、初のLevel 3認定マイコンになる見込み」(同社)としている。
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