ザインエレクトロニクスは2021年3月、プログラミングや設定作業なしに、シングルボードコンピュータ「Raspberry Pi」(通称:ラズパイ)とカメラモジュールの伝送距離を10メートルを超える程度まで延長できるキットソリューションを開発。オンライン通販サイトのDigiーKeyなどでの発売を開始した。販売想定価格は約60米ドル。
ザインエレクトロニクスは2021年3月、プログラミングや設定作業なしに、シングルボードコンピュータ「Raspberry Pi」(通称:ラズパイ)とカメラモジュールの伝送距離を20m程度まで延長できるキットソリューションを開発。オンライン通販サイトのDigiーKeyなどでの販売を開始した。販売想定価格は約60米ドル。
シングルボードコンピュータとして、産業分野や農業分野などで利用が広がっているRaspberry Pi。Raspberry Piは、カメラモジュールが接続でき、「Raspberry Pi Camera Module V2」や「Raspberry Pi High Quality Camera」といった専用カメラモジュールが販売されている。ただRaspberry Pi本体と専用カメラモジュールの接続は、フラットフレキシブルケーブル(FFC)で行うのが標準的であり、Raspberry Pi本体と専用カメラモジュール間の距離は長くても数十センチしか離すことができなかった。
そのため、生産ラインの天井や、農場の高い位置にカメラを取り付けて広範囲を監視するシステムをRaspberry Piベースで実現しようとした場合、Raspberry Pi本体とカメラモジュールを一体化して、高い位置に取り付ける必要があった。
こうした中で、ザインエレクトロニクスでは、独自のビデオ信号伝送技術「V-by-One HS」を応用し、Raspberry Pi本体と専用カメラモジュール間を手軽に延長できるキットソリューションを開発し、このほど、販売を開始した。
開発したキットソリューションは、映像信号をV-by-One HS信号へ変換するトランスミッタIC「THCV241A」を搭載したカメラ側ボードと、V-by-One HS信号を映像信号に変換するレシーバIC「THCV242」を搭載したRaspberry Pi側ボードで構成。両ボードは、それぞれFFCでカメラモジュール接続用の端子にカメラモジュール、Raspberry Piに接続。両ボード間は、市販の安価なLANケーブルを用いて接続できるようになっており、「CAT5eのLANケーブルを用いた場合でも10mを超えるような伝送が行える実力があり、シールドされた、よりグレードの高いLANケーブルを使えば実環境でも20m程度ぐらいまで伝送距離を延長できるだろう」(ザインエレクトロニクス)とする。
カメラ画像の伝送を行うための追加コマンドやプログラミングは一切不要。ボード、ケーブルを接続するだけで、カメラモジュールを直接、Raspberry Piに接続した場合と同様の使い勝手で使用でき「専門知識なく、プラグアンドプレイで手軽に伝送距離を延長し、自由度高くカメラを配置することができるようになる」(同社)。V-by-One HSは、非圧縮で映像信号を高速伝送できる技術であり、伝送遅延もほぼない。
オンライン通販サイトのDigiーKeyなどで販売を開始したキット(型番:THSER101)は、カメラ側ボード、Raspberry Pi側ボードの他、FFC(2本)、LANケーブル(2m)と、ボード固定用部材が同梱されている。
対応するRaspberry Piは、「Raspberry Pi 4 Model B」「Raspberry Pi 3 Model+」の2種。対応するカメラモジュールは、「Raspberry Pi High Quality Camera」「Raspberry Pi Camera Module V2」の2種で、「Raspberry Pi Camera V1.3」はモード限定での対応になっている。
ザインエレクトロニクスでは、主に製造工程監視用途や農産物生育管理用途などでの採用を見込み、オンライン通販サイトなどを通じて拡販していく方針。同時に、Raspberry Pi以外のシングルボードに向けたキットソリューションなどを開発して、シリーズ化していくことを予定している。
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