ワイヤレス充電器などを手掛けるイタリアのスタートアップEggtronicが特許権を有するACワイヤレス給電技術「E2WATT」は、ホーム/自動車アプリケーションなどに向けたワイヤレス充電の電力効率を向上させることが可能だという。
ワイヤレス充電器などを手掛けるイタリアのスタートアップEggtronicが特許権を有するACワイヤレス給電技術「E2WATT」は、ホーム/自動車アプリケーションなどに向けたワイヤレス充電の電力効率を向上させることが可能だという。
2012年設立のEggtronicは、エネルギー変換やワイヤレス電力伝送を専業とする企業で、現在約200件の特許を保有する。主に、電磁誘導方式と電界結合方式のワイヤレス給電を採用したさまざまなコンシューマー機器の設計に注力している。同社がこれまでに調達した資金は、既に2000万米ドルを超えるという。
同社の創設者でありCEO(最高経営責任者)を務めるIgor Spinella氏は、「当社が独自開発したE2WATT技術は、GaNハーフブリッジ回路と、Microchip Technologyのマイコン『dsPIC33』を搭載する。電力アダプターと、『Qi』に対応したワイヤレストランスミッターを組み合わせる“ハイブリッド”によって効率を高め、Qiによって提示される課題を克服することが可能だ」と述べている。
従来型のQiワイヤレス給電には、充電距離が通常5mm、最大出力が30Wなどの制限がある。また、高速充電を行うと、熱保護機能が作動して充電が停止してしまうという、過熱の問題もある。Spinella氏は、「当社のソリューションは、磁場を正しい方向に向けることにより、Qi規格の過熱の問題を回避できるだけでなく、Qi認証されていないApple最新機種『iPhone 12』との互換性も提供することが可能だ。このため、自動車だけでなくコンシューマーアプリケーションへの道も切り開くことができる」と述べる。
同氏は、「この新しいハイブリッド技術は、AC入力を備え、ACアダプターが不要だ。最大出力が300W、40mm離しても充電が可能で最大95%の効率を達成できる上、GaNパワーデバイスの採用により、小型化することも可能だ。また出力はスケーラビリティを備えていて、電気自動車の充電などの、大規模用途向けの適用性も高められる。Qi規格では通常、充電距離5mmで効率が70%程度であるのに対し、E2WATTはその2倍となる10mmの充電距離で95%の効率を達成し、インダクティブ標準規格における真の飛躍的進歩を実現したといえる」と主張する。
下の図に示されているように、Qiシステムは、充電器(給電側)とモバイルデバイスの2つの基本モジュールで構築されている。充電器は、ワイヤレス給電を提供することが可能な電力トランスミッターを1つ以上備え、原則として、電力変換器と制御/通信ユニットで構成されている。さまざまなサブシステムが、1次コイルを駆動するためのアナログ機能や、給電処理を制御するためのデジタル機能を搭載し、他のシステム部品との通信も行っている。
モバイルデバイスは、電力ハーベスティングユニットと制御/通信ユニットで構成された電力レシーバーを1台搭載する。充電器からモバイルデバイスへの給電は、1次コイルと2次コイルを近づけたときに、2次コイル側に発生する誘導起電力を利用して行われる。
Spinella氏は、「当社は、Qi規格に基づき、既にさまざまな自動車メーカーへの対応を進めている。ソリューションの統合レベルをさらに高め、性能や機能を向上させることが可能な独自規格を立ち上げる予定だ。そのために独自開発したASICは、当社が全ての設計を手掛け、TSMCが製造を担っている」と述べる。
E2WATTは、ACから直接電力を給電するため、外部からの電力供給は不要だ。ハイブリッドワイヤレスAC給電方式は、電源とワイヤレス充電の両方に対応することができる。Spinella氏は、「われわれは、同等レベルの有線の電力供給ユニットよりも優れた製品を実現することを目指してきた。排出量や安全性の観点から認証された電力供給を実現するワイヤレス給電技術である」と述べる。
E2WATTは、米Navitas SemiconductorのGaNパワーデバイス「GaNFast」を採用している。GaNFastは、GaN-FETの他、ロジック回路と駆動回路、保護回路までを1パッケージ化したもの。動作周波数は2MHzである。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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