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1000円の製品とは“別世界”、ソニーの高級ワイヤレスイヤフォンを分解この10年で起こったこと、次の10年で起こること(54)(2/3 ページ)

» 2021年08月06日 11時30分 公開

“出来立てほやほや”のソニーチップ

 図3は、V1プロセッサの様子である。V1はソニーのネーミングで、実際は台湾MediaTekの「MT2822SA」というチップだ。内部の解析(本報告では詳細は省略)から、ソニーとMediaTekが共同開発したチップ(ただし一部)だと思われる。

図3:ソニーのプロセッサ「V1」 出典:テカナリエレポート(クリックで拡大)

 パッケージの中には2つのシリコンが入っている。1つはアナログチップで、もう1つがBluetooth通信やオーディオ処理、ノイズキャンセル用の処理などを行うチップだ。ノイズキャンセルのためにマイクロフォンの音声がプロセッサ側に入力されるわけだ。プロセッサ側チップはデジタルオンリーではなく、デジタル機能とアナログ要素を1シリコンに搭載した、ミックスドシグナルの構造となっている。Bluetooth 5.2対応なので、Bluetooth 5.2の新機能である「LE Audio」を実現できる。電力性能も大幅に改善されている。高音質のAudio Codec LDACに対応する。

 図面が小さくて読みにくいとは思うが、2つのシリコンにはそれぞれシリコン設計完了の年号が入っている。アナログ側は「SEP2020」、Bluetoothオーディオのミックスドシグナル側は「JAN2020」と刻印されている。つまり、両チップともに新規に2020年に開発されたものであることを示している。通常、チップは仕様決め⇒設計⇒試作⇒修正⇒量産という工程をたどり、量産までには多くの時間を要する。2020年9月の年号のあるシリコンが、2021年6月に発売された製品に搭載されているのだから、まさに“出来立てホヤホヤ”のシリコンがWF-1000XM4には使われているわけだ。

 本稿には若干解像度を落としたチップ写真を掲載したが、弊社が発行しているテカナリエレポートでは、RAM容量も明確になる鮮明な写真も掲載されているので、必要な方はぜひお問い合わせいただきたい。

 図4は、MEMSマイクロフォンの開封の様子である。前機種WF-1000XM3ではバック、フォワード1基ずつのマイクロフォンを搭載しているが、WF-1000XM4ではフォワード側が2基となり、マイクロフォンの個数が1.5倍に増えている。それにもかかわらず、機器全体の体積は小型化している。

図4:WF-1000XM4のMEMSマイクロフォンの分解写真 出典:テカナリエレポート(クリックで拡大)

 前機種では体積の大きいコンデンサー型のマイクロフォンが使われていたが、WF-1000XM4では体積の小さいMEMSマイクロフォンが使われている。ここでは画質を落としたパッケージ写真を掲載しているが、H社のMEMSマイクロフォンが3基使われている。

 MEMS化することで体積が小さくなっているので、イヤフォン内部での設置場所の自由度も向上している。バック用マイクロフォンはドライバーに沿うように配置されている。MEMSマイクロフォンの内部はMEMSとインタフェースICで構成される。本チップも1パッケージに2シリコンが収められている。MEMS部を拡大すると図4右のように、笑顔のようなパターンを確認できた。

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