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「SIGGRAPH 2021」、装着者の目を表示すぐHMDなど2度目のバーチャル開催(1/2 ページ)

「SIGGRAPH 2021」が2021年8月9〜13日に、多くのカンファレンスと同じく、2年連続でバーチャル開催された。今回は、全てのコンテンツを1つのプラットフォームに統合することで、発見したり視聴しやすい優れたプラットフォームを構築し、2020年と比べてかなりスムーズな運営を実現することができていた。

» 2021年09月21日 11時30分 公開
[Kevin KrewellEE Times]

 「SIGGRAPH 2021」が2021年8月9〜13日に、多くのカンファレンスと同じく、2年連続でバーチャル開催された。今回は、全てのコンテンツを1つのプラットフォームに統合することで、発見したり視聴しやすい優れたプラットフォームを構築し、2020年と比べてかなりスムーズな運営を実現することができていた。SIGGRAPHは、コンピュータグラフィックスとその関連トピックのためのカンファレンスであるということを踏まえると、比較的バーチャル参加に適しているのではないだろうか。また、学術カンファレンスとしても、大半の資料が基調講演と論文のプレゼンのセッションによって提供されている。

 SIGGRAPHのほとんどのコンテンツは、大学や業界の研究者たちによって作成されている。バーチャル化は、論文のプレゼンやチュートリアルには適しているが、直接目で見たり(触覚的に)触れたりする必要がある一部の研究やアートインスタレーションに関しては、インターネット上での効果があまりない場合もある。参加者たちからの人気が高いイベントになりつつある「Real-Time Live!」は、1つの挑戦だったといえるだろう。このイベントでは、誰もがインタラクティブに(自由で対話的に)ライブでプロジェクトを発表することができる。これまでは1つのステージ上で開催されていたが、今や複数のロケーションからSIGGRAPHプラットフォームにストリーミングされるようになった。

 SIGGRAPHカンファレンスは、今回で48回目の開催となる。カンファレンス主催者たちは、50周年という重要な節目が近づいていることを受け、そのための計画の実現を直前まで待ちきれなかったようだ(www.siggraph50.world)。また、業界の有名企業に関する回顧的なセッションもいくつか行われた。例えば、画期的なグラフィックスやワークステーションの開発を手掛けたメーカーの1つであるSGI(Silicon Graphics International)について回顧するセッションもあった。

 さらに、コンピュータグラフィックス分野の進展に重要な役割を果たしたとして2019年に「Alan Turing Award」を受賞した、Ed Catmull氏とPat Hanrahan氏との対談も行われ、両氏がどのように活動を開始し、コンピュータサイエンスや技術開発、文化的変化などの分野における進化を統合して市場形成をサポートしてきたかを語っている。Catmull氏とHanrahan氏は炉辺談話として、コンピュータグラフィックスを進展させてきたさまざまな事象について、見解と回想を共有した。

 カンファレンスでは常に、科学とコンピューティングを融合した興味深いプロジェクトが登場することが期待されている。「Landing on Mars With Your Eyes Open(注目を集める火星着陸)」と題するセッションでは、NASAのジェット推進研究所(JPL:Jet Propulsion Laboratory)のRob Donnelly氏が、火星探査ローバー「Perseverance(パーサヴィアランス)」を、火星の着陸地としては現在最も危険性が高いとされるJezero Crater(ジェゼロクレーター)に着陸させるために採用された、「TRN(Terrain-Relative Navigation)」技術について語っている。

 TRN技術は、コンピュータビジョンを使って、着陸する位置を火星の衛星画像から判断し、安全な着陸場所を決定するという。これは全て、地球側からの制御なしに自動で行われる。TRN技術の採用により、探査ローバーは、科学的に重要とされる場所に、これまでより近づいて着陸することが可能だという。TRNは、2種類の宇宙硬化型FPGAとPowerPCプロセッサを搭載する。

「ゴジラvsコング」などハリウッド映画のメイキング

 SIGGRAPHの中でいつも人気が高いのが、ハリウッド映画や有名なビデオゲームなどのメイキングについて取り上げた映像だ。2021年のカンファレンスでは、「ゴジラvsコング(Godzilla vs. Kong)」の特殊効果のメイキングや、Marvel Studiosの「ワンダヴィジョン(WandaVision)」「ファルコン&ウィンター・ソルジャー(The Falcon and The Winter Soldier)」「ロキ(Loki)」のさまざまなビデオ機能などに関するセッションが行われた。また、第二次世界大戦時が舞台となるトム・ハンクス主演の映画「グレイハウンド(Greyhound)」では、係留されている本物の米海軍の駆逐艦(USS Kidd)と、現実世界の海洋波効果とが融合されている。

 これらの映画やビデオシリーズはいずれも、目標とする視覚芸術を実現する上で、膨大な量のコンピュータグラフィックスやアニメーションが必要だ。ただし、CGI(Computer Generated Imagery)だけが全てではなく、ディズニーのアニメーション映画「Soul」のメイキングに関するセッションでは、キャラクターの造形、発展や、文化的真正性などにも焦点が当てられている。

 2021年の大手スポンサーとしては、Intelがレイトレーシング(近々同社のXe GPUに搭載予定)について発表した他、NVIDIAもさまざまな製品を発表している。またUnityは、映画や設計アプリケーション向けのリアルタイムレンダリングに関するセッションを行った。NVIDIAがSIGGRAPHにおいて発表したハードウェア「RTX A2000」は、同社のRTXアーキテクチャを、小型かつ薄型のデュアルスロットGPU設計に適用したという。A2000は、リアルタイムのレイトレーシングや、AIアクセラレーションコンピュータ、高性能グラフィックスを、スモールフォームファクター(SFF)ワークステーションなどのスリムデスクトップに提供する。

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