恐らく、価格高騰が著しいレガシーなDRAMは、家庭向けの電機製品などに使われているのではないだろうか? コロナによって人々はステイホームを余儀なくされた。その結果、自宅で快適に生活するために、家電製品を(ネットショッピングで)買い求めた。その家電製品には、転送レートが大きく集積度が高いDRAMは必要ない。それ故、市場にはあまり出回っていないレガシーなDRAMの価格が高騰したと考えられる。
この推論は、次の事象から補強される。まず、あらためて図7を見ると、高騰していたレガシーなDRAMのSpot価格が7月あたりから下落している。この頃には世界中でコロナのワクチン接種が進み、ロックダウンなどが解除されてきていた。従って、コロナの巣ごもり需要は、いったん収束に向かったのではないか? ただし、Contract価格については、依然としてレガシーなDRAMの価格高騰が続いており、筆者の推論が正しいか否かは、検証にもう少し時間がかかる。
また、図10に、集積度別DRAMの月次の出荷個数を示す。DRAMは3〜4年おきに最先端の集積度のものに置き換わる。現在主流のDRAMは4G以上の8Gや16Gである。Spot価格とContract価格で価格高騰が大きかった2Gは2013年、1Gは2010年、512Mは2008年頃にピークアウトしている。従って、市場に出回っている絶対数が少ない。そのような希少なDRAMがコロナ禍で突然必要になったため、2倍を超える価格高騰が起きたのだろう。
再度、図4における2020年Q4〜2021年Q1にかけてのDRAMの出荷額の急拡大に話を戻す。この出荷額の急増の要因として、第1にDRAM出荷個数が増大したことを説明した。
では、DRAM価格の上昇は、どの程度影響しているのだろうか? 図10の集積度別のDRAM出荷個数のグラフから、現在生産されているほとんどが4G、8G、16Gであると言えよう。その高集積DRAM(例えば8G)のContract価格は、図9から1.44倍に上昇していることが分かる。
ここで、2020年Q4から2021年Q2にかけて、DRAM出荷額の急拡大がなぜ起きたのかを計算してみよう(図11)。
以上の通り、DRAM出荷額の増大の割合(1.57倍)が、出荷個数が1.13倍になり、主流のDRAMの価格が1.44倍になったことの掛け算の値(1.62倍)とおおむね一致した。従って、図4におけるDRAMの出荷額増大は、出荷個数と価格上昇の両方の要因が関係して起きたことと言える。さらにいうなら、当初は出荷個数増大の方が、影響が大きいと思っていたが、どちらかというと、価格上昇の方がインパクトが大きいということが判明した。
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