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5G 人からモノへ 〜「未踏の時代」迎えた無線技術 特集

一般的な5Gスマホで、衛星との直接接続を実現へ衛星業界に巨大市場が追加(1/2 ページ)

もう、『圏外だ』という言い訳はできなくなりそうだ。「5G NR(New Radio)」規格の最新のアップデートによって、互換性のあるデバイスは世界中どこにいても5G(第5世代移動通信)対応の衛星で接続できるようになる。接続には、従来のような専用の携帯電話機も必要ない。

» 2021年10月05日 14時30分 公開
[Dan JonesEE Times]

 もう、『圏外だ』という言い訳はできなくなりそうだ。「5G NR(New Radio)」規格の最新のアップデートによって、互換性のあるデバイスは世界中どこにいても5G(第5世代移動通信)対応の衛星で接続できるようになる。接続には、従来のような専用の携帯電話機も必要ない。

5Gに対応する「Inmarsat-6」衛星のイメージ図 出所:Inmarsat

 移動体通信の標準化団体「3GPP(3rd Generation Partnership Project)」の最新の5Gアップグレード仕様である「Release 17」は、2022年第2四半期に凍結される予定で、今後そこに新機能が追加されることはない。2023年半ばには、この最新の規格に対応した商用デバイスが市場に登場するとみられる。

 3GPPは、Release 15から前進して非地上系ネットワーク(NTN:Non Terrestrial Network)シナリオの研究に取り組んだ後、Release 17にNTNの要素を追加した。これによりRelease 17対応5Gスマートフォンを使用するユーザーは、地上のセルラーネットワークに接続せずに、互換性のある5G衛星に直接接続することが可能になるという。

 一般的な5G携帯電話機(ただし最新の3GPP規格に準拠)が、地球を周回する人工衛星に直接接続できるようになるのは、史上初となる。実際に、Release 17の最新版で初めて、一般的な携帯電話機が、互換性のある衛星に直接接続することが可能になる。

 これまで、数百マイル離れた衛星に接続するためには、1.5G〜1.6GHz帯のLバンドや2G〜4GHz帯のSバンドを使用する、高価な専用携帯電話機でしか対応することができなかった。

 Northern Sky Research(NSR)のアナリストであるLluc Palerm氏は、「NTN対応電話機は、標準的な5G周波数(サブ6GHz帯、ミリ波帯)を使用して衛星に接続する。またNTNプログラムは、Lバンドのような衛星周波数も取り入れる予定だ」と述べている。

 また同氏は、「現在、Inmarsatなどの既存プレーヤーや、Lynk Globalのような新興企業が、エンドユーザーやIoT(モノのインターネット)アプリケーション向けに、衛星とモバイル5Gの直接接続を提供できるようにするための準備を進めている。こうしたサービスは、地球表面からの高度が約800kmの地球低軌道(LEO)衛星や、高度3万6000kmの静止軌道(GEO)衛星などで利用できるようになるだろう」と述べる。

 「これは、衛星業界に巨大市場を追加するという意味で、非常に重要な取り組みだといえる」(Palerm氏)

 しかし、今回のアップデートにより、「Release 17対応5Gスマホを使って、TikTokのビデオを宇宙から受信できるようになる」というわけではない。

 Palerm氏は、「初期段階では、データ伝送速度が低いアプリケーション向けのサービスとなる見込みだ。データ伝送速度が低い環境でもうまく機能するとみられるユースケースとしては、IoTや、緊急時のテキストメッセージなどが挙げられる」と述べる。

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