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5G 人からモノへ 〜「未踏の時代」迎えた無線技術 特集

一般的な5Gスマホで、衛星との直接接続を実現へ衛星業界に巨大市場が追加(2/2 ページ)

» 2021年10月05日 14時30分 公開
[Dan JonesEE Times]
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5Gの直接接続は「かなり高コスト」

 米調査会社ABI Researchのリサーチディレクタを務めるDimitris Mavrakis氏は、「衛星5Gは、非常に興味深いコンセプトであるが、実現するには多大な努力を要するだろう」と警告する。

 5G直接接続は、かなり高コストになるためだ。

 既存の専用衛星電話機プランは、特に音声通信と基本的なテキストメッセージだけをサポートする契約の場合、非常に高額である。Iridiumが2021年向けに発表しているプランでは、1カ月当たり衛星電話機を10分間使用できるプランが54.99米ドルから始まり、最も高いものでは、1カ月当たり1000分間使用できる1年契約が929.99米ドルだという。

 5G対応電話機で衛星に接続することが可能な“1Dayパス”が利用できるようになれば、価格が下がるというわけではない。ただそうしたパスは、年1回しか使わないかもしれない専用衛星電話機の月額/年間プランよりも安くなる可能性がある。

 Palerm氏は米国EE Timesのインタビューの中で、「通常のモバイルサービスと比べると、確実に高額になるはずだ」と述べている。

 今のところまだ、5G対応パスの価格がどの程度まで高くなるのか、正確には分からない。市場のどの主要プレーヤーも、その件について正式な発表を行っていないからだ。

世界を網羅するIoT

 Palerm氏は、「5Gスマートフォンユーザーの他にも、衛星直接接続をけん引する重要な要素の1つとして、IoT市場が挙げられる。3GPPは、NB-IoT(狭帯域IoT)エアインタフェースを衛星経由で実装する研究を行っている。またInmarsatとMediaTekは、既に軌道上で試験を行ったという」と述べている。

 また同氏は、「衛星に直接接続するさまざまなIoTアプリケーションの種類に関しては、確実にリモート関連のユースケースが存在する。想定される初期ユーザーとして、農業やエネルギー、運輸などの分野が挙げられる。エンドユーザーと、IoTアプリケーションを導入している企業の両方にとって、衛星直接接続の最大の目玉となるのは、セルラーアクセスなしに実現することは不可能であるという分野に、セルラーアクセスを導入することができるという点ではないか」と述べる。

 地球は、地表全体の70%以上が海で覆われている惑星であり、セルラーネットワークは世界人口全体の85%をカバーするにとどまっていることから、直接衛星接続が実現すれば、リモートワークや人命救助を完璧に実行できるようになるといえるだろう。

LEO衛星を巡る野望

 この他にも、一般的な携帯電話機向けにLEO衛星通信を提供することを目指す動きがある。その証拠として、SpaceXなどの企業がますます興味を示しているということや、現在地球軌道上を周回している数百基もの新しいLEO小型衛星の性能が向上しているといった点が挙げられる。Sierra Wirelessのチーフサイエンティスト、Gus Vos氏は、米国EE Timesの取材に対し、「この小さな低軌道ネットワークの空間全体に、大きな興奮と関心があると考えている」と述べている。

 新興企業のLynk Global社は、2020年3月18日、SpaceXのロケットで打ち上げられたLEO超小型衛星、いわゆる「宇宙のセルタワー」の1つに一般的な携帯電話を接続し、フォークランド諸島の上空からテキストメッセージを送信したことを明らかにした。同社は、独立した観測者が現場にいる状態で、このテストを複数回繰り返したという。

 同社は、2022年に小型衛星コンステレーションを打ち上げて、携帯電話への直接接続サービスを開始するためのライセンス申請をFCC(連邦通信委員会)に行っている。

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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