筆者は4月21日に、『半導体不足は「ジャストインタイム」が生んだ弊害、TSMCが急所を握る自動運転車』を寄稿し、その記事の中で、なぜ車載半導体不足が生じたかを分析した。しかしどうも、現在起きている現象は、それとは異なるように感じる。そこで本稿では、再度、クルマがつくれない原因を半導体の視点から考察する。
筆者は、そこそこクルマ好きである。今乗っているクルマはお気に入りではあるが、13年が経過し、そろそろ買い替え時だと思っていた。ところが、2021年10月31日付日経新聞によれば、半導体不足でクルマが生産できず、新車の納期が軒並み長期化しているという。通常はせいぜい1〜3カ月の納期がその倍近くに長期化しており、人気があるクルマでは1年も待たなければならない(図1)。
筆者は、「そんなに半導体が不足しているのか!」と驚き、無念であるがことしクルマを買い替えるのは諦めた。そして、来年2022年2月に7回目の車検を受けざるを得ないと覚悟を決めた。
どうもクルマ業界は予想以上に深刻な状況に陥っているらしい。11月2日付日経新聞によれば、今年10月の新車販売台数は27万9341台で、統計を取り始めた1968年の27万9643台を(2台)下回り、過去54年間で最低だったという。この記事には、半導体不足と東南アジアのコロナ感染拡大による部品不足がその原因であると記載されている。
筆者は2021年4月21日に、『半導体不足は「ジャストインタイム」が生んだ弊害、TSMCが急所を握る自動運転車』を寄稿し、その記事の中で、なぜ車載半導体不足が生じたかを分析した。しかしどうも、現在起きている現象は、それとは異なるように感じる。そこで本稿では、再度、クルマがつくれない原因を半導体の視点から考察する。
ただし、読者の皆さまをがっかりさせることになって申し訳ないが、その原因は「よく分からない」という結論になった。筆者は、どこかの誰かが、半導体を買いだめしていると勘繰りたくなっている。
図2に、2016年1月から2021年9月までの日本のクルマ生産台数を示す。2020年5月頃、クルマ生産が大きく落ち込んでいる。これは、コロナ騒動によりクルマ需要が“蒸発”し、クルマメーカーが減産したことが原因である。その減産は2020年秋頃に回復したが、年末辺りから再び減産となっている。特に、ことし2021年の夏以降の減産はひどい状況のように見える。
ここで、クルマの生産には季節的な要因があることを考慮するため、2016〜2019年の毎月の平均生産台数(以下、平均台数)と2020年以降の生産台数の比較を行った(図3の上)。そして、2020年1月以降について、平均台数との差を算出した(図3の下)。
この図を見て筆者は、「うわっ!」と叫んでしまった。2020年4〜6月頃に30万台以上減産になったのは、コロナ騒動でクルマ需要が消滅したことによる。ところが、最新データの2021年9月の減産(40.3万台)は、コロナ騒動の最もひどいときの2020年5月(40.9万台)と同じレベルじゃないか! しかも、7月から9月にかけて状況は悪化し続けており、まだ発表されていない10月の生産台数は、もっと酷くなっているかもしれない(新車販売台数が史上最低だからきっとそうなるのでは?)。
このような事態なら、新車の納期が半年〜1年になっても仕方がない。しかし、それにしても、なぜそんなに半導体が不足しているのだろうか?
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