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「半導体不足」は本当か? クルマ大減産の怪湯之上隆のナノフォーカス(44)(2/3 ページ)

» 2021年11月26日 10時30分 公開

車載半導体の出荷個数の動向

 世界半導体市場統計(WSTS)では、毎月初めに2カ月前の半導体統計データが発表される。例えば、2021年11月初旬には、2021年9月までの各種半導体統計データがリリースされた。

 そのWSTSの統計データで、クルマ用と明記されているものとして、ロジック、MCU(Micro Controller Unit、いわゆるマイコン)、アナログがある。この3種類の半導体について、2019年1月〜2021年9月の出荷個数をグラフにしてみた(図4)。

図4:クルマ用Logic、MCU、Analogの出荷個数(2016年1月〜2021年9月)[クリックで拡大] 出所:WSTSのデータを基に筆者作成

 このグラフを見て、またしても筆者は、「うわっ!」と叫んでしまった。最新のデータである2021年9月の出荷個数を見て頂きたい。車載用の3種類とも、単月では過去最高の出荷個数を記録している。特に、ロジック半導体の出荷個数は、とてつもない成長となっている! これで、どうして半導体不足ということになるのだろう?

 2020年3月から8月にかけて、3種類の半導体の出荷個数は大きく落ち込む。この原因は、クルマ需要が消滅し、完成車メーカーが1次下請け経由で2次下請けの半導体メーカーへの発注をキャンセルしたことによる。また、2次下請けの車載半導体メーカーは、40nm以降をTSMCに生産委託していたため、TSMCへの発注もキャンセルされた。

車載半導体は不足していない!

 しかし、2020年10月頃には、3種類の半導体の出荷個数は、コロナ前の3月の水準に回復している。その後、2021年2月に米テキサス州を突然の寒波が襲い、車載半導体売上高シェア1位のドイツInfineon Technologiesと同2位のNXP Semiconductorsの工場が停止した。続いて3月には、同3位のルネサス エレクトロニクスの那珂工場で大規模な火災が発生して車載半導体が生産できなくなった。

 ところが不思議なことに、ロジックも、マイコンも、アナログも、4月以降それほど出荷個数が減少しているように見えないのである(アナログはやや減っているが激減ではない)。そして前述したように、同年9月には、3種類とも、単月では過去最高の出荷個数となった。これは、稼働が止まっていたInfineon、NXP、ルネサスの各工場が生産と出荷を再開したことによるものだろう。

 しかも、完成車メーカーから、「半導体不足でクルマがつくれない」という檄が飛び、各社とも一気にアクセルを全開したため、過去最高の出荷個数となったと考えられる。

 それなのに、なぜ、「半導体不足でクルマがつくれない」と言われるのだろうか? 正直なところ、筆者は理解できない。どこかの誰かが、買いだめしていると勘繰りたくなろうというものである。冒頭で、「クルマがつくれない原因が良く分からない」と書いたのは、このような事情による。

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