Keysight Technologies(日本法人:キーサイト・テクノロジー)は2021年12月20日、車載用ミリ波レーダーセンサーシステムのテスト環境として、512個のオブジェクト(物体)を疑似再現できるレーダーシーンエミュレーターを発表した。
オブジェクト数が3個から一気に512個に拡大し、フルシーンエミュレーションが可能に――。
Keysight Technologies(日本法人:キーサイト・テクノロジー)は2021年12月20日、車載用ミリ波レーダーセンサーシステムのテスト環境として、512個のオブジェクト(物体)を疑似再現できるレーダーシーンエミュレーターを発表した。自動車が走行する実環境により近い状態でレーダーセンサーをテストでき、レーダーセンサーを用いる先進運転支援システム(ADAS)や自動運転(AD)のアルゴリズム開発に要する時間を大きく短縮できる見込み。
ADASや自動運転システムの開発には、多くの走行テストを積み重ねなければならない。完全な自動運転システムを実現するには160億kmにも及ぶ走行テストが必要だという試算も存在する。そうした膨大な距離を実際に車を走らせてテストするのは現実的ではなく、実際の走行環境を仮想的に再現したシミュレーション環境でのテストが不可欠で、ADASや自動運転システムの開発に向けたさまざまなシミュレーション環境が開発されている。
ADASや自動運転システムの実現する上で、不可欠なセンサーの1つになっているミリ波レーダーセンサーのテストに向けても、自動車の周囲に存在する物体を模擬的に再現するエミュレーターが製品化されてきた。計測機器大手のKeysightも2020年に「E8718A」を製品化するなどレーダーエミュレーターを展開してきた。ただ、従来のレーダーエミュレーターが模擬できる物体数は、E8718Aで最大3個で「市販されている他の大手メーカーの製品でも最大5個ぐらいだった」(キーサイト)
キーサイト オートモーティブ エナジー・ソリューション事業部の高野修平氏は「ハードウエアとしてのレーダーセンサーの性能、特性をテストする分には、3個のオブジェクトを模擬することで十分ではあるが、レーダーでの物体検出アルゴリズムを開発する場合、実走行環境と同じ数のオブジェクトを模擬する必要がある。100〜200個を超えるような数のオブジェクトを模擬する必要があった」とする。
そうした中でKeysightは、レーダーセンサーからの電波を受けて、任意の電波に加工処理(エフェクト処理)しレーダーセンサーへ送り返すエミュレーションモジュールを小型化。従来から大幅に小型化したエミュレーションモジュールを横に64個、縦に8個、計512個並べたワイドスクリーン形状のエミュレーターを開発、製品化した。これにより、左右±70度、垂直±15度の範囲で最大512個ものオブジェクトを1度に模擬できるため、限りなく実走行環境に等しい状態(=フルシーン)でテストが行えるようになる。
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