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» 2022年01月07日 09時30分 公開

イジング問題をGPUの100倍の速さで解く光チップ新興企業Lightelligenceがデモ(1/2 ページ)

光コンピューティングを手掛ける米の新興企業Lightelligence(ライテリジェンスと発音)が、シリコンフォトニクスアクセラレーターのデモを披露した。一般的なGPU搭載システムに対し、イジングモデルを100倍以上の速さで解くことが可能だという。

[Sally Ward-Foxton,EE Times]

 光コンピューティングを手掛ける米の新興企業Lightelligence(ライテリジェンスと発音)が、シリコンフォトニクスアクセラレーターのデモを披露した。一般的なGPU搭載システムに対し、イジングモデルを100倍以上の速さで解くことが可能だという。

 Lightelligenceのフォトニック算術計算エンジン「Pace」は、約1万2000個のフォトニックデバイスで構成された1GHz動作の統合型オプティカルコンピューティングシステムである。同社が2019年に発表した、100個のフォトニックデバイスで構成されるプロトタイプ「Comet」に比べて、約100万倍の高速化を実現するという。またLightelligenceは、今回の最新デモで初めて、自社製ハードウェアのAIアクセラレーション以外のユースケースを披露した。

「Pace」の試作品[クリックで拡大] 出所:Lightelligence

 Paceは、計算的に極めて難しいとされている、NP完全問題クラスのアルゴリズムを、既存のアクセラレーターの何倍もの速さで実行するという。全てのアプリケーションに対して光学的な優位性を実証したわけではないが、イジング問題を一般的なGPUの100倍の速さで解くことが可能だ。イジング問題向けの専用システムである東芝の「シミュレーテッド分岐マシン(SBM:Simulated Bifurcation Machine)」に対しても、25倍の速さを実現したという。

 NP完全問題は状態空間が非常に大きいため、それを解くには巨大なコンピューティングリソースが必要だ。このクラスには、イジング問題や最大カット/最小カット問題、巡回セールスマン問題なども含まれている。実際にNP完全問題が発生するアプリケーションとしては、生物情報学やスケジューリング、回路設計、材料探索、暗号化、最適化電力網などが挙げられる。

Yichen Shen氏

 LightelligenceのCEO(最高経営責任者)を務めるYichen Shen氏は、米国EE Timesのインタビューの中で、「オプティカルコンピューティングの優位性が例証できたため、NP完全アクセラレーションのデモを決断した」と語っている。

 Shen氏は、「当社のオプティカルコンピューティングエンジンの中核となるのは、行列乗算をGPUよりもはるかに短時間で完了できるという点だ。64×64の行列乗算の場合、GPUはクロック数が数百にも上るのに対し、当社の技術は10ナノ秒未満または約5ナノ秒で実行することができる。NP完全問題は、行列乗算を何度も繰り返し実行するため、当社の技術の優位性が大きくなる。われわれはこの新技術により、フォトニクスの優位性が発揮される問題を見つけ出したい考えだ」と主張した。

 NP完全アルゴリズムの反復的性質は、連続的な行列乗算が事前の結果によって左右されるということを意味する。これにより、システムエレクトロニクスの部分で生じるボトルネックを最小限に抑えることができる。言い換えれば、データが乗算の間にメモリを行き来する必要がなくなるのだ。

 Shen氏は、「より規模の大きい商用ユースケースの場合、デジタルエレクトロニクスやメモリ読み書きが、コンピューティングシステム全体の足かせになり得る。このような負担を考慮しても、将来的に十分なメリットを提供することができると考えた。100倍とまではいかないが、少なくとも数倍の高速化は実現できる見込みだ」と述べている。

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