またLightelligenceは、ボトルネックを軽減すべく、データ放送やデータインターコネクトを対象としたフォトニクス技術の開発にも取り組んでいる。
Shen氏は、「Lightelligenceは、NP完全問題に向けたアクセラレーターの商用化を目指していくのか」とする質問に対し、「ハードウェアに関しては、市場参入に向けて挑戦していくことは可能だ。しかしこの技術は、当社製品向けとして適用する予定であるため、AI(人工知能)アクセラレーションをはじめとする幅広い市場に対応できるようになるだろう」と答えている。
シリコンフォトニクスをベースとするオプティカルコンピューティングは、計算速度や電力効率を桁違いに高めることができる。変調赤外線を導波路と呼ばれるシリコンワイヤに移動させることをベースとした技術だ。導波路は、標準的なCMOSプロセスを適用して製造することができる。一種のアナログコンピューティングが、2つの導波路と2つの信号を効率的に組み合わせながら、オンチップ変調器(輝度を変調)が2つの信号を効率的に増幅する。また同時に、オプティカルMACユニットも形成できる。しかし、オプティカルコンピューティングは行列乗算のような線形動作を加速させるためには最適だが、非線形動作やメモリ、制御などに関しては、標準的なデジタルエレクトロニクスが必要だ。
Lightelligenceは、競合相手であるLightmatterと同様に、演算器として、シリコンフォトニクス版のマッハツェンダー干渉計(MZI)を使用している。しかし、LightmatterがMEMSを使用してMZIの導波路の物理的形状を変えているのに対し、Lightelligenceは、導波路に電子を注入して光屈折率を調節し、通過する光信号を変調するという。
Shen氏は、「Lightelligenceの技術は、他の光学設計と同様に、さまざまな種類の波長や偏光を使用して、複数の入力を同時に処理することができるという可能性を秘める。例えば、一組のAI推論に対して異なる色を適用するといったことが挙げられる」と述べる。
Lightelligenceがデモを行ったPaceの中核チップとしては、フォトニックダイに接続されたASIC制御ダイフリップチップが挙げられる。このアセンブリは、既存の基板上にPCBを介して搭載され、ファイバーアレイでレーザー光源に接続されている。ミックスドシグナルASICは、制御ロジックでデジタルブロックを搭載することにより、データフローやI/Oの他、データストレージ用SRAMなどを制御する。ASICのアナログ部は、デジタルブロックとフォトニックデバイスをブリッジする。
Lightelligenceのエンジニアリング部門担当バイスプレジデントを務めるMaurice Steinman氏は、「個々のチップを設計することは非常に難しいが、それを統合することはさらに難しい。光コンピューティングは、実際にアナログコンピューティングの一種であるため、高忠実度(high fidelity)な結果を出すためには、膨大な量の回路設計やシミュレーション、反復、テストチップなどが必要だ」と述べている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.