米国の半導体製造の復活と技術サプライチェーンの強化を目指す取り組みは2022年1月24日(米国時間)の週、米国製半導体の「生産の急増」に向けた資金提供と幅広い技術の研究開発への投資を盛り込んだキャッチオール法案が提出されたことで、進展を見せた。
米国の半導体製造の復活と技術サプライチェーンの強化を目指す取り組みは2022年1月24日(米国時間)の週、米国製半導体の「生産の急増」に向けた資金提供と幅広い技術の研究開発への投資を盛り込んだキャッチオール法案が提出されたことで、進展を見せた。
下院に提出された「America COMPETES Act(アメリカ競争法)of 2022」は、既に上院で承認され最新の国防権限法案に含まれているCHIPS法(CHIPS for America Act)に、520億米ドルの資金を充てるとしている。下院の法案では、半導体製造に加え、再生可能エネルギーやサイバーセキュリティ、AI(人工知能)、量子コンピューティングといった幅広い分野の研究資金も増額している。
下院議長を務めるNancy Pelosi氏は、法案を下院の議場に移すにあたって、「下院の法案は、CHIPS法への投資の強化と、国内生産の促進、サプライチェーンの強化、研究能力の変革、海外における米国の競争力とリーダーシップの向上につながるものである」と強調した。
下院の法案は、CHIPS法に資金を提供する以外にも、技術の研究開発により重点を置き、米国の研究インフラやSTEM(Science, Technology, Engineering and Mathematics)プログラム、開発者の育成の活性化を目指している点で、上院の法案と異なる。上院の法案に対しては、ポスト「ムーアの法則」の変革的な半導体技術のような分野に焦点を当てるのではなく、中国の半導体製造イニシアチブを模倣しようとしていると批判する声も上がっていた。
両院間で重視する点が異なることでCHIPS法への資金提供が遅れたため、バイデン政権と半導体業界は、こう着状態を打開することを目的としたロビー活動に乗り出した。例えば、IntelのCEO(最高経営責任者)を務めるPat Gelsinger氏は2022年1月21日に、米国オハイオ州の半導体製造工場に200億米ドルの投資を行うことを発表するとともに、CHIPS法の成立を再度要請した。
下院の法案が提出された同じ日に、米商務省は2021年の半導体在庫が5日以下にまで減少していたことなど、「半導体不足の深刻さ」を裏付けるデータを発表した。2021年9月に開始され最近発表された半導体サプライチェーンに関する調査によると、ICの需要は2019年から2021年末にかけて17%も増加し、ファウンドリーは稼働率90%以上で運営していることが分かった。それでも、自動車や民生機器、医療機器メーカーによる半導体需要の急増には対応できていないという。
商務長官であるGina Raimondo氏は、「半導体サプライチェーンは依然として脆弱だ」と述べている。バイデン政権は、技術サプライチェーンの混乱がインフレを助長していると主張し、IC研究の結果を引用して、半導体製造法の承認を議会に迫った。
下院の法案は、サプライチェーンの混乱が続く中で、国内の半導体製造の復活と半導体の研究開発への資金調達を目的とした、行政と業界の圧力に対応した内容となっている。
IntelとSamsung Electronics、TSMCの各社は米国に新しい工場を建設すると発表したが、これらの投資を行うには、各州がこれまで提供してきた以上の税制優遇措置やその他のインセンティブが必要だと述べている。
半導体関連の業界団体であるSEMIが指摘しているように、下院の法案には半導体製造装置メーカーおよび材料サプライヤーが連邦助成金プログラムを利用できるようにする条項が含まれている。SEMIのプレジデント兼CEOを務めるAjit Manocha氏は、「この助成金によって、米国の半導体サプライチェーンを強化し、半導体製造工場と上流サプライヤーの両方の製造施設を新たに誘致することができる」と述べている。
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