企業や組織の枠を超えて製品や技術の開発を行うオープンイノベーションに向けた取り組みが増加している。そうした中、製造業の中小企業のインキュベーター/アクセラレーターLanding Pad Tokyo(以下、LPT)でディレクターを務めるボンド智江子氏は、「オープンイノベーションでは、中小企業の存在が置き去りになっているのではないか」と指摘する。
企業や組織の枠を超えて製品や技術の開発を行うオープンイノベーションに向けた取り組みが増加している。そうした中、製造業の中小企業のインキュベーター/アクセラレーターLanding Pad Tokyo(以下、LPT)でディレクターを務めるボンド智江子氏は、「オープンイノベーションでは、中小企業の存在が置き去りになっているのではないか」と指摘する。
LPTは、2020年4月に設立された。カナダ・トロントのライアソン大学に併設されているインキュベーター/アクセラレーターであるDMZから、スタートアップを支援する仕組みや知見を移転する契約を結び、それをベースに日本の中小企業支援向けプログラムを作り込んで展開している。DMZの他、カナダ・オンタリオ州のウォータールー大学 ウォータールーナノテクノロジー研究所とも覚書を締結している。
これらの契約や覚書により、LPTは、カナダの起業家教育を取り入れたプログラムや、カナダのスタートアップの紹介やマッチングサービスを、LPTの会員企業に提供する。
LPT設立のきっかけは、相模原市の自治体関係者や企業が、友好都市を提携しているカナダ・トロントを訪問したことだった。設立の時期がちょうどCOVID-19のパンデミックが始まったタイミングでもあったため、設立以来、全てバーチャルで活動を続けている。
LPTの最大の特長は、製造業の中小企業の支援に特化していることだろう。
そもそも日本には、多数の中小企業が存在する。「2021年版 中小企業白書」(中小企業庁/2021年7月発行)によれば、製造業における中小企業の割合は85.7%と非常に高い。一方で付加価値額に占める割合は、47.5%と半数に満たない。そのため、中小企業では事業の高付加価値化や、高い収益性のある事業の創成が課題になっている。
だが、事業創成や市場開拓を目指す中小企業を支援する仕組みは整っているとは言い難い。
スタートアップを支援する組織は、ベンチャーキャピタルから大手インキュベーター/アクセラレーター、行政のインキュベーターまで数多く存在する。中小企業についても、金融機関や地方自治体の産業支援課など、支援する組織がないことはないが、こうした組織は、どちらかといえば公平性を重視し対象も地域に限定するなど、支援の方法や範囲が限られている。積極的にオープンイノベーションを目指す中小企業を、スタートアップ同様に支援できる仕組みだけが抜け落ちているのが現状だ。冒頭でボンド氏が指摘した通り、中小企業の存在が置き去りになっているのである。
この空洞を埋める活動に取り組んでいるのがLPTだ。“伴走型支援”を掲げ、新しい技術や市場へのアクセスの提供、学術機関や専門家への相談のアレンジ、有効なビジネスモデルの導入や北米の人事制度の紹介、外国人採用やインターンシップのサポートなどを手掛ける。現在の会員企業は約25社。イノベーション志向が高く気概にあふれた中小企業を会員として選んでいる。「ある程度のレベルの企業を選択し、地域を超えた形で支援していく。そうすることで、他の中小企業も引っ張り上げることができるのではないか」(ボンド氏)
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