非会員でも参加できるセミナーやディスカッションもオンラインで毎週開催する。カーボンニュートラルからサプライチェーンのリスク管理、米中ハイテク戦争に関わる地政学的な情報、デジタルツイン、人事関連まで幅広く、国内外の時事問題と技術動向の両方をカバーするテーマを取り上げている。
LPTのエグゼクティブ・ディレクターを務める加藤聖隆氏は、「中小企業がスタートアップ同様に新しいビジネスや市場に打って出るには、今まで以上の知識やタイムリーな判断が必要になる。セミナーやディスカッションを行うのは、“自分ごと”として捉えて考えてもらうためだ」と強調する。
「最も重要なのは、中小企業が、それぞれの業種にこだわらず有機的に連携することだ。そこにギブアンドテイクが生まれる。例えばセミナーで毎週、画面越しにやりとりしていると、バーチャルなはずなのに親近感がわいてくる。だんだんと雰囲気になじんできて、次の行動へとつながるようになる。いわば、“昭和型の付き合い方”を現代風にアップデートして、スピードアップも図っていくイメージだ」(加藤氏)
「バーチャルの長所は、移動時間を節約できる点だ。セミナーやディスカッションに、週に何度も出席する会員もいる。『コロナ以前は、飲みに行ってわいわい騒ぐだけで終わってしまうことも多かったが、セミナーに参加する今の方がずっとよい』と言ってくださる会員もいる」(ボンド氏)
「LPTが触媒となり、中小企業同士が化学反応を起こすことにより、通常ではつながらない人や組織、技術がつながるようになる」(同氏)
成功例も着実に増えている。半導体製造装置や加工装置のメーカーが、AI(人工知能)技術やVR(仮想現実)技術を手掛けるカナダのスタートアップとマッチングし、それらの技術を導入したPoC(Proof of Concept)を実施した例や、ウォータールー大学からインターンを採用した企業、アジアでの開発に踏み切った企業など、次々と成果が生まれている。
中小企業×スタートアップの組み合わせだけでなく、会員同士(=中小企業同士)で自然発生的に協業が生まれたケースもあった。「セミナーで毎週話しているうちに意気投合し、神奈川県の会員企業が、九州の会員企業を自ら訪問しに行った例もある」とボンド氏は述べる。
LPTが目指すのは、まさにこうした“つながりの発生”だ。
LPTの会員企業は、「とにかく何でもやってみよう」という気持ちが強いという。加藤氏は、「自分たちのノウハウを使って、どんどん外に出ていこうという経営者も多い。新しい事業機会や市場機会を見つけ出すという意味では、スタートアップと同様のアプローチを採らなくてはならない。そこを、LPTが支援する。コンサルティングや中小企業診断士だけではなかなかできないところをサポートすることが、われわれの役割だ」と語った。
コロナ下でバーチャルの活動が続く中、LPTは、日本とカナダの現場をオンラインでつなぐべく、試行錯誤を繰り返してきた。「製造業は、リアルな現場を必ず持っている。最も重要なのは、そのリアルな空間をいかにバーチャルでつなげていくかだ」(加藤氏)
例えば試作品を製作する場合、全く同じ部品をそれぞれ通販などで購入し、日本とカナダの現場をオンラインでつなぎ、画面越しに確認しながら作業を進めていくこともある。プログラムコードであれば、『GitHub』のように簡単にシェアできる場所がいくらでもある。だが実際に回路を動かすとなるとハードウェアが必要で、これはバーチャルな空間ではシェアできない。LPTは、いわば“リアルツイン”のような環境を作り上げている。
ボンド氏がスタートアップなどのラボに赴き、自ら装置や試作品などをカメラで撮影して、オンライン会議ツールで“実況中継”することもあるという。
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