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RISC-Vを取り巻く環境が大きく変化した1週間「x86、Armに並ぶ存在」とIntelも認める(1/2 ページ)

2022年2月7日の週はRISC-Vエコシステムにとって、非常に重要な1週間だったといえる。一連の発表により、オープンソースの命令セットアーキテクチャ(ISA)の注目度が高まったのだ。以下に詳しく取り上げていきたい。

» 2022年02月15日 10時30分 公開
[Sally Ward-FoxtonEE Times]

 2022年2月7日の週はRISC-Vエコシステムにとって、非常に重要な1週間だったといえる。一連の発表により、オープンソースの命令セットアーキテクチャ(ISA)の注目度が高まったのだ。以下に詳しく取り上げていきたい。

IntelのRISC-V International加盟

 Intelは2022年2月7日(米国時間)、RISC-V Internationalにプレミア(Premier)会員として加盟することを発表した。同社のファウンドリー事業部門「IFS(Intel Foundry Services)」は、複数のISA上で構築された設計を活用することにより、ファウンドリー大手であるTSMCやSamsung Electronicsとの競争を繰り広げていく考えだという。またIntelは、「x86、Arm、RISC-V向けに最適化されたIP(Intellectual Property)を提供するファウンドリーは、当社だけだ」と主張する。

 同社のこの言葉は、「RISC-Vがx86とArmに並ぶ主要なチップアーキテクチャになる」ということを認めているため、非常に重要だといえる。

 IntelがRISC-Vを採用するということは、独自のエコシステムを開発するということを意味する。そのためにIntelは、主要なRISC-Vプレーヤーとの協業を発表した。例えば、CPUメーカーのSiFiveや、AIアクセラレーターチップメーカーEsperanto、組み込みCPUメーカーAndes Technology、データセンター向けCPUメーカーVentana Microsystemsなどが挙げられる。これらのパートナー各社は、Intelとの協業により、Intelのプロセス技術に向けて自社設計を最適化していく予定だという。

 IFSのプレジデント、Randhir Thakur氏は、ブログに投稿した記事の中で、「RISC-Vは、主要なオープンソースのISAとして、当社のオープンソースエコシステムのビジョンに最適だといえる。このためわれわれは、エコシステムを強化し、RISC-Vのさらなる普及をサポートするため、投資とパートナーシップ構築を行う」と述べている。

IFSのプレジデント、Randhir Thakur氏 出所:Intel Foundry Services

 その一方でIntelの投資部門であるIntel CapitalとIFSは、IPやソフトウェアツール、チップアーキテクチャ、最先端パッケージングなどの分野に10億米ドルを投じるという。この資金投入によって、半導体チップの開発サイクルを加速させていくと同時に、Intelのオープンチップレットプラットフォームに焦点を絞り、RISC-Vを始めとする複数種類のISAを使用する設計手法をサポートしていく予定だ。

 Intelは発表の中で、「ファウンドリーの顧客からは、より多くのRISC-V関連製品をサポートしてほしいという強い要望が上がっている。投資資金の一部は、RISC-Vの普及を加速させるために使う予定だ。またこの資金提供により、画期的な技術を持つRISC-Vメーカーが、IFSのサポートを介してより迅速にイノベーションを実現できるよう、技術の最適化での協業や、ウエハーシャトルでの優先順位付け、顧客の設計支援、開発ボードおよびソフトウェアインフラ構築などにおいて協力していく」と述べている。

 RISC-VはIntelの支援により、業界最先端のチップアーキテクチャの1つとして位置付けられるようになる。IFSとIntel Capitalの資金提供は、RISC-V技術の商業的普及が確実に促進されるだろう。

NVIDIAのArm買収断念とIPO計画

 NVIDIAは2022年2月、RISC-Vの競争相手であるArmの買収計画から撤退することを発表した。これについては予想外のことではない。NVIDIAが660億米ドルでArmを買収するとしたこの計画は、複数の管轄区域の規制当局によって却下されたためだ。RISC-Vは既にArmにとって脅威となっているが、NVIDIAのArm買収が失敗に終わったことで、RISC-Vの脅威はさらに高まっていくだろう。

 Armは、恵まれた売却先候補との関係を失ったため、IPO(新規株式公開)の実現に向けて覚悟を決めようだ。資金調達や、現行オーナーであるソフトバンクからの多額の投資を取り戻していきたい考えだという。Armは以前に、英国の規制当局に提出した文書の中で、「IPOは、最悪の事態以外の何物でもない。データセンター/PC市場(Armにとっての中核であるモバイル市場は、既に飽和状態だ)におけるArmの競争力を維持していく上で、NVIDIAの潤沢な資金力が不可欠だ。NVIDIAは、価値ある専門知識や多額の資金を提供することにより、Armがこれらの市場に取り組んでいけるようサポートしてくれるはずだ」と説明していた。

 Armは規制当局に対し、「株式公開企業としての当社は、売り上げがまだ初期段階にある事業に十分な投資を行うための資金力を持てない可能性がある。NVIDIAが特に懸念しているのは、Armがこのようなプレッシャーによってデータセンター/PC市場の優先度を下げ、その代わりに中核市場であるモバイルや、拡大の一途にあるIoT(モノのインターネット)事業などに注力するようになることだ。その結果、CPU市場の集中化が進み、Intel/AMD(x86)によって大いに支配され、残りは、はるかに大きな利益を上げている強力なArmアーキテクチャライセンシーたちに支配されることになるだろう」と嘆願している。

 またArmは、RISC-Vメーカーとの厳しい競争に直面している点についても強調した。Armは、その中のSiFiveのRISC-VプロセッサコアIP「Performance P550」について、「小型パッケージに搭載されたArmの既存のCPU IPブロック(Cortex-A75)に比肩する」と主張する。

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