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メモリ不況は当分来ない? 〜懸念はIntelのEUVと基板不足、そして戦争湯之上隆のナノフォーカス(48)(2/4 ページ)

» 2022年03月17日 11時30分 公開

DRAMの出荷額と出荷個数の分析

 冒頭で書いた通り、Mos Memoryの中のDRAMの需給バランスは崩れやすく、過去に何度も価格暴落を引き起こしてきた。そのため、「シリコンサイクル」という言葉が生み出されたほどである。

 そのDRAMについて、1991年〜2021年までの出荷額と出荷個数の推移を見てみよう(図3)。出荷額は価格の影響を受けて、大きく上下動していることが分かる。この出荷額の変動によって筆者の人生は大きく変わってしまったのだ(くどいですね)。

図3:DRAMの出荷額と出荷個数[クリックで拡大] 出所:WSTSのデータを基に筆者作成

 ここで、出荷個数に着目すると、大きく4つの時期に分けることができる。

1)1991年〜2003年:緩やかに出荷個数が増大した時期

 これは主に、日米欧の先進国におけるPCや電機製品の需要がけん引していたと考えられる。

2)2003年〜2011年:急激に出荷個数が増大した時期

 21世紀に入って中国を筆頭とするBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)などの途上国が急速に経済発展を遂げた。その新興国の人々が携帯電話、PC、各種電機製品を購入したため、それらに搭載されるDRAMの絶対数の需要が拡大したことが原因である。

3)2011年〜2018年:出荷個数が年間約150億個でほぼ一定になった時期

 次第にDRAMメーカーが淘汰されていった。特に2012年にエルピーダが倒産してMicron Technologyに買収されると、DRAMメーカーは実質的にSamsung Electronics、SK hynix、Micronの3社に集約された。この3社がDRAM市場を独占し、過剰供給による価格暴落を防ぐために暗黙の談合が行われ、各社が生産調整を行った。その結果、出荷個数が横ばいになったと推測している。

4)2018年以降:再び、DRAMの出荷個数が急激に増大し始めた時期

 この原因を筆者は次のように考えている。DRAMの主戦場が、PCからモバイルを経て、データセンター用Serverに移行しつつある(図4)。その結果、DRAMメーカー3社がServer用DRAMの覇権を巡って再び競争し始めた。そしてデータセンター投資が活発になったため、DRAMの絶対数を増大させる需要が生み出された。これらの要因により出荷個数が急激に増大していると推測している。

図4:DRAMの用途別生産量(単位は2Gb換算で100万個)[クリックで拡大] 出所:Mark Liu , “The Opportunities and Challenges for Server Supply Chain After Pandemic”, TrendForce主催の2020年6月のWebセミナーの資料を基に筆者作成

メタバースが加速するメモリ需要の拡大

 上記に加えて、現在世の中では、メタバースがはやり言葉になっている。最初は何のことか良く分からなかったのだが、オンライン上に構築された3Dの仮想空間を意味するとのことらしい。その仕組みはまだ不勉強で分からないものの、これまで以上にデータセンターが必要なことは理解できる。そのため、データセンター用のServerが大量に必要になり、そのServer用のDRAM需要が急拡大していることは容易に想像できる。

 そして、このような需要拡大は、DRAMだけではなく、NAND型フラッシュメモリやプロセッサ(MPU)にも及ぶはずである。以下では、それを定量的に見てみよう。

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