TDKは2022年3月22日、小型、低静電容量および狭公差の車載イーサネット向け高ESD(静電気放電)耐量チップバリスタ「AVRH10C101KT4R7YA8」を開発したと発表した。ESD耐量は2万5000Vの高耐圧で、静電容量範囲は4.7±0.57pFという狭公差を実現。OPEN Allianceの、車載イーサネット100BASE-T1向けESD保護部品の規格に準拠している。
TDKは2022年3月22日、小型、低静電容量および狭公差の車載イーサネット向け高ESD(静電気放電)耐量チップバリスタ「AVRH10C101KT4R7YA8」を開発したと発表した。ESD耐量は2万5000Vの高耐圧で、静電容量範囲は4.7±0.57pFという狭公差を実現。OPEN Allianceの、車載イーサネット100BASE-T1向けESD保護部品の規格に準拠している。
自動車のADAS(先進運転支援システム)や自動運転の発展に伴い搭載するセンサーやECU数が増加し、ネットワークの複雑化やハーネス増加による重量増、ECU間でのすり合わせの必要性などといった課題が生じている。この課題解決のため、自動車業界ではE/E(電子/電気)アーキテクチャを、ECUが独立してさまざまな制御/駆動処理を行っていた従来の「分散型」から、物理的な位置(ゾーン)ごとにECUを統合する「ゾーン型」に刷新するべく開発が進んでいるという。
そしてこのゾーン型アーキテクチャにおいて、「セントラルブレイン」と呼ばれる制御処理を集約する中央のコンピュータと各ゾーンでECUを束ねる「ゾーナルゲートウェイ」間の通信を行う車載ネットワークとして、高速、低遅延な車載イーサネットが採用されている。
TDKは、ゾーン型アーキテクチャへシフトする中で、ESD保護部品に求められる特性として3点を挙げる。1つ目は、高速通信に対応するための「低静電容量化」。2つ目は、ゾーン化によってECUの統合が進み部品実装密度が上昇することに対応する「小型形状化」。そして3つ目は、ハーネスの軽量化を図りUTP(シールド無しツイストペア)採用が進むことで懸念されるノイズ耐性減に対応する「静電容量狭公差化」だ。
また、自動車メーカーからはOPEN Allianceスペックへの対応が求められているといい、同社の説明担当者は、「車載イーサネット向けESD保護部品を開発するにあたり、スペックの内容をよく理解し対応したものを準備していく必要がある」と語る。
今回、同社が発表したチップバリスタは、同社の高精度な積層技術、製造プロセスと工程設計の最適化により、OPEN Allianceが2020年にリリースした車載イーサネット100BASE-T1向けESD保護部品の規格「OPEN Alliance 100BASE-T1 ESD Device Specification ver.2.0」で要求されるパフォーマンスを全てクリアする特性を実現したという。
同規格が求めるスペックは、通信品質やESD、イミュニティに関し、大きく分けて4項目ある(下右図を参照)。OPEN Allianceの規格リリース前に、TDKが開発した従来製品(2017年発売)では、そのうち、安定したイーサネット通信を行うための差動信号のSパラメーターを規定する「Mixed Mode S-Parameter」と、ESDの印加前後でこのSパラメーターが大きく変動しないか確認する「Damage from ESD」の2つの試験項目をパスできていなかった。今回の新製品は、その結果を踏まえ開発を進めた結果実現したものだという。
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