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低静電容量、狭公差の車載イーサネット向け高ESD耐量バリスタOPEN Allianceの100BASE-T1規格準拠(2/2 ページ)

» 2022年03月30日 09時30分 公開
[永山準EE Times Japan]
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添加物の見直し

 今回実現した2項目への対応について、同社の説明担当者から詳しく話を聞いた。

 まず「Damage from ESD」については、従来製品はESD印加直後、静電容量が大きく減少した。静電容量は時間と共に徐々に初期値に復帰するものの、この当初の変化が大きいために、ESD印加直後のSパラメーターが規定の範囲から外れてしまっていた。

「Damage from ESD」への対応。 左と中央のグラフは赤線が従来製品、青線が新製品の特性だ。中央のグラフからは、新製品がESD印加後のSパラメーターの変動が少なく、規定の範囲(リミットエリア)内に収まっていることが分かる[クリックで拡大] 出所:TDK

 この特性はバリスタ素体のセラミックス材料物性によるものであり、TDKは今回、添加物の量を最適化することで、ESD印加時の静電容量減少を抑制することに成功したという。説明担当者は「われわれのバリスタの材料は、90%以上が酸化亜鉛で、残りを数種類の添加物を混ぜて使っていた。これら添加物は従来製品でも同じものを使っていたが、その配合比を見直すことで、今回の特性を実現できた」と語った。

静電容量交差をスペック化する

 もう一方の「Mixed Mode S-Parameter」に関しては、「静電容量の交差が大きく影響していることが分かったので、そこを見直した」という。

 実際の回路(下図左、OPEN Allianceの100BASE-T1推奨回路)においては、差動通信ラインにそれぞれ1個のバリスタを使用することになるが、説明担当者は、「バリスタ2つの静電容量のずれがSパラメーターの特性に非常に影響していることが確認できた」と語った。

 差動通信チャンネル間の静電容量ずれが増加すると、規格のリミットラインとのマージンが無くなっていくことが判明したことから(下図右グラフ参照)、リミットラインを外れないような静電容量交差を明確にし、スペック化(今回の製品では±0.57pF)することで、規格を満たす特性を実現したという。また、Sパラメーターが安定することで、通信信号品質の維持やノイズ耐性向上、放射ノイズ抑制も可能にしている。

右のグラフは縦軸がSパラメーターで横軸が周波数。赤線がOPEN Allianceが規定するリミットライン。その他の線は異なる静電容量ずれ量を表しており、リミットラインの下側であれば特性が良好。ずれ量が1.81pFの場合はリミットラインを超えてしまっている[クリックで拡大] 出所:TDK

 AVRH10C101KT4R7YA8は「車載向けチップバリスタ業界最小クラス」(同社)の1005サイズ(1.0x0.5x0.5mm)で、使用温度範囲は−55〜+150℃、最大許容回路電圧は70V。サンプル価格は1個当たり15円(税別)だ。2022年3月から生産を開始しており、当初は月産1000万個体制で対応する。説明担当者は、「車載イーサネットの採用は大きく加速していくことが見込まれており、拡大する市場に合わせて対応していきたい」と説明。2023年には月産1500万個、2024年には月産2000万個体制へと拡大していく予定だという。また、OPEN Alliance準拠の1000BASE-T1向け製品についても開発中だという。

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