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深刻な半導体模倣品問題、ブロックチェーンで対策へSEMIが規格策定に向け準備中(1/2 ページ)

半導体不足が続く中、半導体デバイスの模倣品が市場に流通するという問題が深刻化している。業界はどのような手を打てるのか。半導体の業界団体であるSEMIジャパンは2022年5月24日に開催した記者説明会で、ブロックチェーンの適用など、模倣品対策の規格化を進めていると語った。

» 2022年05月25日 11時00分 公開
[村尾麻悠子EE Times Japan]

 半導体不足が続く中、半導体デバイスの模倣品が市場に流通するという問題が深刻化している。業界はどのような手を打てるのか。半導体の業界団体であるSEMIジャパンは2022年5月24日に開催した記者説明会で、ブロックチェーンの適用など、模倣品対策の規格化を進めていると語った。

SEMIジャパンの角淵弘一氏

 模倣半導体の流通は、何年も前から問題となっていた。米国では2011年ごろ、軍用機器に使用されている半導体デバイスに模倣品が混入していることが大きな問題になった。そこで米国は国防権限法818条を発し、「半導体デバイスの納入者(ディストリビューターに対し、納入物に模倣品が混入していた場合、それによって発生した被害額を全て納入者が負担する」ことを定めた。だが、当然のことながら、ディストリビューターも半導体メーカーも、意図的に模倣品を混入しているわけでは決してない。SEMIジャパン 日本地区トレーサビリティ委員会 共同委員長の角淵弘一氏は、「それ故、法律は制定されたものの、実運用は難しく、(対策が)業界全体に行き渡っていない」と語る。

 そこでSEMIでは、2018年以降、北米地区および日本地区でトレーサビリティに関するタスクフォースを結成して対策を始めてきた。2020年末には、SEMIスタンダード日本地区トレーサビリティ委員会にブロックチェーンタスクフォースが結成されている。

左=SEMIで模倣品対策が始まった背景/右=SEMIで結成されたタスクフォース[クリックで拡大] 出所:SEMIジャパン

水平分業化や半導体不足で模倣品が増加

 半導体模倣品が増加している背景としては、半導体の設計/製造の分業化、半導体ユーザーにおける調達方法の変化、そして半導体不足が挙げられる。

 多数のファブレス半導体メーカーが存在する現在、回路設計、前工程、後工程において水平分業化が進んでいる。半導体のユーザーである機器メーカー/製品メーカーでも外部委託は増えていて、半導体の回路基板への実装のみならず、デバイスの調達も外部業者に委託することが多い。さらに2020年以降、半導体不足が深刻になってからは、正規のディストリビューターから十分な量を調達できず、市場に流通している在庫を探して調達する企業もいる。こうした状況は、半導体の模倣品が混入するリスクを招いてしまう。

 角淵氏は、模倣品が判明した例として、1)使用済み半導体が新品として市場に流通している、2)受託製造業者の一部が、受注量よりも多く製造するなど不正に製造し、正規の製品検査をせずにブラックマーケットに流している、3)設計/製造の情報が流出し、その情報を基に半導体デバイスが偽造されているケースを紹介した。

半導体デバイスの模倣品の発生事例[クリックで拡大] 出所:SEMIジャパン

 SEMIが模倣品対策として作成を進めている規格は、まずは「正しく製造されていることを証明できる」ことを目的とする。「材料や製造装置などの情報を、業界として管理していくことを目指し、米国のメンバーを中心に進めている」(角淵氏)。さらに、半導体デバイスの完成後に、流通過程においてトレーサビリティを実現する規格についても、日米それぞれで作成が進んでいる。市場に流通している半導体デバイスを管理するためのデータの定義部分は米国主導で進め、ブロックチェーンの適用については日本主導で進める。「SEMIは、全世界の半導体業界を網羅する業界団体だが、その中でも、(模倣品に対する)課題意識が高い日米の技術者が中心となり、規格化を進めている」(角淵氏)

SEMIが開発している規格[クリックで拡大] 出所:SEMIジャパン
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