東北大学は、日本製鋼所や三菱ケミカルとの共同研究により、低圧酸性アモノサーマル(LPAAT)法を用いた窒化ガリウム(GaN)基板の製造において、使用するシード(種結晶)基板の品質が、結晶成長後の品質に影響することを確認した。
東北大学多元物質科学研究所の秩父重英教授らは2022年5月、日本製鋼所や三菱ケミカルとの共同研究により、低圧酸性アモノサーマル(LPAAT)法を用いた窒化ガリウム(GaN)基板の製造において、使用するシード(種結晶)基板の品質が、結晶成長後の品質に影響することを確認したと発表した。
東北大学はこれまで、基板の反りがほとんどなく、大口径で高純度のGaN単結晶基板を量産することができるLPAAT法を独自に開発してきた。高圧の超臨界流体アンモニアを用いる従来の酸性アモノサーマル(AAT/SCAAT)法に比べ、半分の圧力で結晶成長を可能にする技術である。これにより、超大型炉を用いて大口径GaN基板の作製が容易になるという。
今回は、LPAAT法の実用化に向けて、使用するシードの種類(HVPE製やSCAAT製)による結晶品質の違いなどを検証した。この結果、LPAAT法により高品質のSCAATシード上にGaN単結晶を成長させた試料は、外観が透明かつ平たんで、X線ロッキングカーブ半値全幅が20秒以内と結晶モザイク性も低いことが分かった。
また、室温のフォトルミネッセンススペクトルも、自由励起子の再結合によるバンド端発光が支配的であり、高純度なGaN結晶であることを確認したという。
研究グループは今後、量産用大型オートクレーブにLPAAT法を活用し、GaN基板の量産技術として実用化を目指す。さらに、成長温度のさらなる最適化や、これにより作製されたGaNの輻射・非輻射再結合レート、空孔型欠陥濃度などについても、筑波大学などの協力を得ながら定量化していく予定。
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