ダイオードを使った整流回路の解析について、複数のダイオードを接続した整流回路兼電圧逓倍回路を解説する。
(ご注意)今回は前回の続きとなっています。まず前回の内容を読まれることを推奨します。
前回は、ダイオードを使った整流器(整流回路)を解析する4つの手法の中で、常微分方程式を数値計算によって解く手法と、EDA(Electronic Design Automation)ソフトウェアを使う手法を簡単に説明した。今回は、ダイオードをカスケード接続した回路を使う手法をご紹介する。
複数のダイオードをカスケード接続し、前段のダイオードのアノード側と後段のダイオードのカソード側をコンデンサで結んだ回路を想定する。交流を直流に整流する回路であるとともに、交流電圧を逓倍する回路となる。このような回路は「ビラード・カスケード電圧逓倍回路(Villard cascade voltage multiplier)」、あるいは「コッククロフト・ウォルトン電圧逓倍回路(Cockcroft-Walton voltage multiplier)」などと呼ばれる。
4個のダイオードと4個のコンデンサで構成する整流逓倍回路を考えよう。交流(あるいは高周波)入力に対し、コンデンサは短絡回路と見なせる。このため、4個のダイオードによる入力インピーダンスZinは4分の1となる。N個のダイオードとN個のコンデンサで同様の回路を構成したときは、入力インピーダンスはZin/Nに減少する。
直流入力に対し、コンデンサは開放回路と見なせる。従って入力電圧V0は4倍に増加する(厳密にはコンデンサへの充電を繰り返すことで電圧が倍増する)。N個のダイオードとN個のコンデンサで同様の回路を構成したときは、出力電圧はV0のN倍に増える。
ビラード・カスケード電圧逓倍回路を利用した解析方法は2つ選んだ。1つは「Ritz-Galerkin(リッツ・ガラーキン)法」を当てはめる方法、もう1つは「常微分方程式(ODE:Ordinary Differential Equation)」を当てはめる方法である。
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