「Ritz-Galerkin(リッツ・ガラーキン)法」による近似解法は本シリーズの第17回(前々回)で説明した。ビラード・カスケード電圧逓倍回路のダイオード数をNとすると、第17回で説明した入力の高周波電力Pavと出力の直流電圧Vdcの関係式は以下のように変化する。すなわち高周波電源の寄生抵抗RgはNRgに増加し、負荷抵抗のRLはRL/Nに減少する。
「Ritz-Galerkin(リッツ・ガラーキン)法」にビラード・カスケード電圧逓倍回路を当てはめる。入力と出力の関係式はダイオードの数Nによって変化する[クリックで拡大] 出所:imecおよびEindhoven University of Technology(IEDMショートコースの講演「Practical Implementation of Wireless Power Transfer」のスライドから)ビラード・カスケード電圧逓倍回路のダイオード数を2個とした場合と、4個とした場合でリッツ・ガラーキン法による近似解と測定値を比較した。負荷抵抗を100Ωから100kΩまで3桁ほど変化させ、入力電力と出力電圧の関係を求めた。近似解と測定値はかなり良く一致した。ダイオードの数による違いはあまり見られなかった。
整流回路の入力電力(横軸)と出力電圧(縦軸)の関係(近似解と測定値)。左はカスケード接続したダイオードを2個(N=2)、右はダイオードを4個(N=4)とした場合[クリックで拡大] 出所:imecおよびEindhoven University of Technology(IEDMショートコースの講演「Practical Implementation of Wireless Power Transfer」のスライドから)次に、ダイオードの数がn個(n段)の ビラード・カスケード電圧逓倍回路(整流逓倍回路)の入力インピーダンスZrectifier,n-stagesを求めることを考えよう。具体的には、1個のダイオードによる整流回路の等価回路モデルを常微分方程式で表現し、入力インピーダンス(抵抗成分Rとリアクタンス成分X)を計算する。
ダイオードの数がn個(n段)のビラード・カスケード電圧逓倍回路(整流回路)(左)と、1個のダイオードでまとめた等価回路(右)[クリックで拡大] 出所:imecおよびEindhoven University of Technology(IEDMショートコースの講演「Practical Implementation of Wireless Power Transfer」のスライドから)ダイオードの数を2個、4個、6個と変更して計算した結果は以下のようになった。抵抗成分の大きさはダイオードの数に依存しない。周波数が増加すると抵抗成分が急激に減少する特性も、ダイオードの数によらず等しい。
リアクタンス成分の大きさはダイオードの数によって大きく変化する。周波数特性はダイオードの数によらない。周波数が増加するとリアクタンス成分は減少する。
入力インピーダンスの抵抗成分Rとリアクタンス成分Xの計算結果。左はダイオードが2個の場合。右上はダイオードが4個、右下はダイオードが6個の場合。AEは常微分方程式を解いた結果。HBはEDAソフトウェア「ADS」による解析結果[クリックで拡大] 出所:imecおよびEindhoven University of Technology(IEDMショートコースの講演「Practical Implementation of Wireless Power Transfer」のスライドから)⇒「福田昭のデバイス通信」連載バックナンバー一覧
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