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実はシェアが急低下、危機の入り口に立つ日本の前工程装置産業湯之上隆のナノフォーカス(52)(3/4 ページ)

» 2022年07月11日 14時00分 公開

2015年で規格化した各種の装置市場

 さて、図2で、直近5〜6年において、装置市場が急拡大していると述べた。そこで、2015年でそれぞれ規格化した各種装置市場のグラフを書いてみた(図5)。

図5:2015年で規格化した各種半導体製造装置の出荷額[クリックで拡大] 出所:野村証券のデータを基に筆者作成

 すると、2015年からの6年間で、全ての装置が、約3倍に成長した装置群と、約2.5倍に成長した装置群の2種類に分類できることが分かった。

 約3倍に成長した装置群は、ドライエッチング装置(3.14倍)、CVD装置(3.10倍)、CMP装置(3.09倍)、PVD装置(2.91倍)、露光装置(2.90倍)、コータ・デベロッパ(2.89倍)である。

 一方、約2.5倍に成長した装置群は、検査装置(2.56倍)、洗浄装置(2.54倍)、CD-SEM(2.43倍)である。

 しかしそれにしても、全ての前工程の装置の出荷額が、わずか6年間で、約2.5〜3倍に成長しているとは驚きである。半導体の微細化は止まることなく続いており、半導体市場も、装置市場も、青天井で急成長している。

 1987年〜2002年に、DRAMの凋落とともに、悲しい技術者人生を送ってしまった筆者の時代とは、まるで様子が異なる(技術者ではないが、ジャーナリストとしてそれに関わることができているだけでも幸せなことなのかもしれない)。

2021年の前工程装置の企業別シェアと市場規模

 2021年の前工程装置の企業別シェアを図6に示す。各種の装置が少数の企業によって寡占化されているように見える。

図6:前工程装置の企業別シェア(2021年)[クリックで拡大] 出所:野村証券のデータを基に筆者作成

 例えば、「1強+その他」に該当するのは、露光装置(ASML)、コータ・デベロッパ(TEL[東京エレクトロン])、スパッタ装置(AMAT)、外観検査装置(KLA)、パタン検査装置(KLA)などがある。

 「2強+その他」としては、AMATとLam Research(以下、Lam)のCVD装置、TELとKOKUSAI ELECTRICの熱処理装置、AMATと荏原製作所のCMP装置、SCREENとTELのバッチ式洗浄装置、LasertecとKLAのマスク検査装置などがある。

 3社以上の混戦状態になっている分野としては、Lam、TEL、AMATによるドライエッチング装置、SCREEN、TEL、SEMES、Lamによる枚葉式洗浄装置がある。ただし、ドライエッチング装置においては、Lamがかなり優位なポジションを占めており下克上は起きそうもないが、枚葉式洗浄装置では場合によっては下克上が起きる可能性があると思われる。

日本の世界シェアが高い装置の特徴

 日本のシェアが高い分野としては、コータ・デベロッパ(91%)、熱処理装置(95%)、枚葉式洗浄装置(61%)、バッチ式洗浄装置(91%)、マスク検査装置(44%)、測長SEM(69%)などがある。

 ここで、日本のシェアが高い装置分野と市場規模を見比べてみて、ある特徴に気がついた。それは、市場規模が100億米ドルを超える分野では、日本のシェアは高くないということである。逆の言い方をすれば、市場規模の大きい分野を欧米の装置メーカーが独占しているともいえる。

 例えば、ASMLの露光装置(164億米ドル)、LamとAMATによるドライエッチング装置(189億米ドル)、AMAT、Lam、ASMIによるCVD装置(約100億米ドル)、KLAとAMATによる外観検査装置(104億米ドル)である。

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