近いうちに、HPC(High Performance Computing)やデータ分析、5G(第5世代移動通信)ネットワーク処理、AI(人工知能)や機械学習のオペレーションにおいてさえも、多くの技術者が適切なプロセッサを選ぶ決断をより容易に下せるようになるかもしれない。
近いうちに、HPC(High Performance Computing)やデータ分析、5G(第5世代移動通信)ネットワーク処理、AI(人工知能)や機械学習のオペレーションにおいてさえも、多くの技術者が適切なプロセッサを選ぶ決断をより容易に下せるようになるかもしれない。
今や、CPUやGPUの実装を決めるのではなく、モノリシックデバイスが「Prodigy」(Tachyumが開発した“ユニバーサルプロセッサ”)という形で選択肢となる可能性がある。Prodigyは、CPUとGPUの機能を単一のアーキテクチャに組み込んだものである。同社の創設者兼CEO(最高経営責任者)であるRado Danilak氏は、米国EE Timesとのブリーフィングの中で、「この単一のデバイスはクラウドコンピューティング、AI、HPCの環境向けにより高い性能やパワーを実現し、総所有コストの効率を高める可能性を秘めている」と述べた。
Prodigyのサンプリングは2022年末、量産は2023年前半にそれぞれ開始する予定だ。Prodigyは最大5.7GHzで作動する単一化された128個の高性能コアで構成されており、空冷式または液冷式のデータセンター向けのラックソリューションを用意している。
Tachyumは、スーパーコンピュータの作業負荷に対処できるよう、CPUモデルと拡張されたベクトルプロセッサを採用した。その上でそれらを改良し、AIデータやマトリクスに対処できるようにした。Danilak氏は「どのコアもIntelやAMDのあらゆるコアより早く、チップ間全体では約4倍高い」と述べた。
電力消費は、データセンターの限界を制限し得る、最も重要なペインポイントの一つである。今日、データセンターでは地球上の電力の約4%が消費されており、世界規模で排出される二酸化炭素量は航空業界全体の1.5倍となっている。
Danilak氏は「現在の傾向が何も変わらなければ、2040年にはデータセンターで(地球上の)電力の40%が消費されるようになる」と述べた。
そのような甚大な電力消費にもかかわらず、多くのサーバは十分に活用されてはおらず、Facebookによる調査では24時間平均利用率は50%未満だという。そのように低い利用率でありながら、年間コストは数十億米ドルに及ぶ。
Danilak氏は「夜間に使われていないサーバを止める代わりにユニバーサルプロセッサを利用し始めれば、それらをAI向けに使えるようになり、単一のGPUを調達することなく10倍以上のAIを得られるようになる」と述べた。
これらの事が起きている背景には、プロセッサの性能向上が鈍化していることや、プロセスが微細化してもムーアの法則はもはや維持されないと見られていることがある。さらに、トランジスタが高速化しても配線によって遅延が生じる。機能ブロックの性能は現在、配線遅延によって制限されているのだ。
改良のスピードが遅くなったことで、オーバープロビジョニングが起こり、その結果、消費電力が増大している。そこで、Tachyumでは、電気と物理の観点からこの問題を見ることにしたのである。
Prodigyは、速度低下の根本的な原因となっている配線を介したデータの移動を行わないことを選択することで、電力と性能の課題に対処している。Danilak氏は、「これによって、速度が向上するだけでなく、電力も節約できる」と述べている。こうして、Prodigyはより少ないリソースでより多くの処理が可能となった。
Danilak氏は、ProdigyがAIアクセラレーターではなく、AIに適したCPUの代替品だと強調した。同社は2022年6月初めに、認定された顧客やパートナー向けに、メモリとアプリケーションソフトウェアを備えた完全な機能を持つProdigyプロセッサを搭載した「Tachyum Prodigy評価プラットフォーム」を2022年後半に数量限定で構築すると発表している。
同評価プラットフォームでは、標準的な2U空冷式フォームファクターの高性能サーバを提供し、幅広い市場セグメントの顧客がユニバーサルプロセッサをテスト/評価できるとしている。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.