今回は1989年〜1991年の主な出来事をご紹介する。NORフラッシュの量産が始まり、UV-EPROMの置き換えが急速に進んだ。
フラッシュメモリに関する世界最大のイベント「フラッシュメモリサミット(FMS:Flash Memory Summit)」の会場では最近、「Flash Memory Timeline」の名称でフラッシュメモリと不揮発性メモリの歴史年表を壁にパネルとして掲げるようになっていた。現在は、FMSの公式サイトからPDF形式の年表をダウンロードできる(ダウンロードサイト)。
この年表は1952年〜2020年までの、フラッシュメモリと不揮発性メモリに関する主な出来事を記述していた。とても参考になるので、その概略をシリーズで説明する。原文の年表は全て英文なので、これを和文に翻訳するとともに、参考となりそうな情報を追加した。また年表の全ての出来事を網羅しているわけではないので、ご了承されたい。なお文中の人物名は敬称略、所属や役職などは当時のものである。
前回は、1988年〜1989年の主な出来事を説明した。NORフラッシュメモリ製品の用途開拓が始まり、電子スチルカメラとパソコンに期待がかかった。今回は1989年〜1991年の主な出来事をご紹介する。
NORフラッシュメモリの製品化によって最初に売り上げを伸ばしたのは、紫外線消去型EPROM(UV-EPROM)の置き換えである。UV-EPROMは当時、システム開発におけるファームウェア(マイクロコンピュータやマイクロコントローラーなどを動かすソフトウェア)の検証に使われていた。開発したファームウェア(プログラム)をUV-EPROMに格納してプログラムの動作を検証する。検証作業で不具合(バグ)を見つけ、修正済みのプログラムを再びUV-EPROMに書き込んで検証する。バグがなくなるまで、これらの作業を繰り返す。
UV-EPROMはメモリセルを1個のトランジスタだけで構成するので、記憶容量当たりのシリコンダイ面積は、半導体メモリの中では最も小さい。すなわちシリコンダイのコストが低い。しかし紫外線照射によってデータを一括消去するために、窓付きのセラミックパッケージを必要とする。このパッケージは標準的なプラスチックパッケージよりもはるかに高価で、UV-EPROMの価格を押し上げていた。
NORフラッシュメモリはメモリセルを1個のトランジスタだけで構成するので、原理的なシリコンダイ製造コストはUV-EPROMと変わらない。そして安価なプラスチックパッケージに封止するので、パッケージングまで含めた全体の製造コストは、NORフラッシュメモリがUV-EPROMに比べてかなり低くなる。
さらに、データの消去が紫外線照射という特殊な方法ではなく、高電圧の印加という電気的な方法であることは、プログラム更新作業の負担を大幅に軽くした。使い勝手が大きく向上した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.